第675話 クリスの家族
「すみません。俺のルタは気性が少し荒めなんで、自分で連れて行きます」
柵の破壊ならともかく、クリスの家の人に怪我されたら困る。
「案内するよ! 荷物を頼む」
クリスが言って馬を引いて歩き出す。後半の荷物っていうのはセバスチャンに向けて。
馬を迎えるための人もいたけど、結局みんなでそのまま馬を引いて預け先に向かった。
ついたのは放牧地――に併設されてる馬房のそばに、個別の運動場がある所。慣れていない馬とか怪我した馬とかを隔離する用だって。馬が走れるようにか、運動場は細長く柵で仕切られてる。
「馬がたくさんいるのだな」
アッシュが視線をやる先には柵で囲まれた広い放牧場があって、30頭くらいの馬が思い思いに過ごしている。
「真っ白い子もいる!」
「小さいのも!」
「可愛い!」
子供たちが目を輝かせる。
「うちの馬だけじゃなく、預かっているのもいるからね。繁殖もしているのだよ!」
クリスが答える。
「へえ」
色々な仕事があるな。
馬の国の野生馬たちもすごかったけれど、こっちはこっちで牧歌的でいいな。見ていて安らぐ。
「いいわねぇ……リラックスできるわ。ここのところバタバタしてたし、たまにはいいわね」
ハウロンがのんびり過ごす馬たちに目を細める。
「リゾート行ったのに!」
近い将来に日本並みの果物栽培を目指してほしいという下心はあったけど、ハウロンのために張り切って用意したのに、馬に負けた!
「あれは心の平穏から遠かったのよ!! 安らぎの中に爆弾仕込むのタチが悪いわ!!」
ハウロンが言い返してくる。
「リゾート……?」
レッツェが呟く。
「どこ行ったんだ?」
「カーンの国のそばで見つけたオアシス。仕事でぎゅうぎゅうのハウロンに1人の時間をゆっくり過ごしてもらえるよう、ちょっと整えた」
ディーンに答える俺。
そばというか、あそこもカーンの国になるんだろうか? 周りに国がない場合って、国境どうなるんだろ。
「自然環境は素晴らしかったわよ。出されたものが爆弾だっただけで」
自分の眉間の皺を指先でぐりぐりするハウロン。
「何だしたんだ?」
ディノッソが聞いてくる。
「そのうち作ってほしい果物と、お酒と、ハウロンが興味持ちそうな本」
だけですよ?
「へえ」
ディーン。
「あれを果物と言われると辛いわよ! それに火の国の資料なんて帝国と共に焼けたはずなのよ、どこから持ってきたのよ!」
ハウロンがぷりぷりしている。
精霊図書館の最初は、知を欲した本狂いの皇帝のコレクション。ルゥーディルが消失するのを惜しみ、テルミストに移した。
その王の治めた帝国は、魔物と竜に飲み込まれたみたいなことだったけど、どうなんだろう? 同じ場所に次の文明が起こるとか移行するんじゃなくって、場所ごと移動して国ごと破棄されるんだよね。
その時代を代表する精霊が変わるせいで、同じ環境にいられないとかかもしれないけど、同じ場所にいてもいいんじゃっていう精霊でも場所ごと変わってるよね。元の場所は人が住めなくなってるというか。
「不穏なモンしか感じねぇが、ハウロンが抗えないモンでねじ伏せてる気配がする。手加減とか段階とかしってるか?」
レッツェが俺を見てくる。
「ちゃんとスイカとかマンゴーはもう作ってもらってます」
段階は踏んでます!
「レッツェ、もうティルドナイ王の国に就職しない? というか、アタシのそばか、ジーンのそばに必ずいてくれない?」
「無茶言うな、死ぬ。どう考えても世界が違う」
ハウロンがレッツェに泣きつき、レッツェが却下する。
「まあ、私の故郷が大賢者の癒しになるのなら光栄だよ」
笑顔のクリス。
「おーい、クリスの家の人が待ってるんじゃね? 馬は後にしようぜ」
ディーンが牧場の柵の前できゃっきゃしている子供たちとアッシュに声を掛ける。
アッシュの後ろには執事、リゾート問題は範囲外ですって顔してる。
そんなこんなで家の中、クリスのご家族と対面する。
「やあ、よく来たね! 大賢者の術は素晴らしい、精霊の囁きをもらったものの、本当に今日到着するか実は半信半疑だったのだよ!」
朗らかに言うお父さん。
「いつもクリスがお世話になっています。親しい方々ができて、私も安心ですわ!」
胸の前で手を組んで、キラキラとした瞳を向けてくるお母さん。
「ようこそいらっしゃいました。――兄さん、お久しぶりです」
「初めまして。――おかえりなさい、兄上」
……リードの他に弟は2人だった!
家族がすごく似てる! 似てると言うか、本当にモンタージュみたいに顔の上と下を入れ替えただけ!
クリスは顔の上半分母親で下半分父親、上の弟は顔の上半分父親似で下半分顎のラインが綺麗な母親似、線の細い病弱だって言ってた一番下は父親似!
ここにいないリード、リードも並べたい! リードは母親そっくり!
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