第674話 イーズ家
カヌムの家から出て、まず寄るのは貸し馬屋。ルタのお迎えです。
「相変わらず懐いてんな……」
馬房を破壊して出てきたルタを迎え、首筋を撫でているとレッツェがため息混じりに言って横目で見てくる。
金がなかったらルタを養いきれなかったかもしれないけど、幸い金はあるんでいいんですよ。今日も今日とて貸し馬屋の親父に多めに心づけを渡して解決です。
それぞれ馬を引き出し、人気のない魔の森付近まで移動して転移。
やってきましたクリスの故郷! 大賢者様の【転移】で! 大賢者様の【転移】で来たことになってます!
「おー。緑だ!」
ディーン。
感想が緑ってどうなんだって思うけど、一面若草に覆われた丘陵で緑です。魔の森の黒いような濃い緑、それとは違う萌えるような綺麗な緑だ。
「わあ! 本当に羊さんがいっぱい!」
「思ってたより茶色い!」
「違う灰色!」
ティナ、エンとバクの声が上がる。
「丘の天辺まで……いや、遠くに見えるのは石か」
ディノッソ。
遠くに白っぽい灰色の石が点在して見える。石灰石の地形で大きな木は根が張れないから草地なのかな?
「ははは、洗えば真っ白になるんだけどね!」
クリスが笑う。
茶色っぽかったり灰色だったりするのは汚れのようです。放牧してたらそうなるよね、白さを気に掛けるのは人間だ。
……うちの羊と山羊、真っ白だけど自主的に水浴びでもしてるんだろうか?
「家に案内するよ」
そう言って馬に跨るクリス、エンも一緒。
ティナはアッシュと、バクはディーンと。ディノッソとシヴァはラブラブ二人乗り。
イーズ家に馬がいるんで、今クリスが乗っている馬はディノッソが乗ることになってる。
子供たちは楽しそうだし、シヴァは嬉しそう。ディノッソもね! もうクリスがそのまま貸し馬屋の馬に乗るんでいいんじゃないかな。
俺は毎回ルタ頼みじゃなくって、乗馬の練習をするべきだろうか。
俺がクリスの家を知らないので、地図で人のいないだろう場所に【転移】した、馬も一緒で大人数だからね。クリスの家までちょっと距離がある。
ぱかぽこ馬に乗っていると、遠くの村人(?)が手を振ってくる。作業の手を休めて、少しの間
「目立ってんなぁ」
ディノッソが言う。
「しかも集団だし、丸見えだしで目立つなって方が無理だな。ハウロンに来てもらってよかったぜ」
レッツェ。
「この島に事実とは違うアタシの伝説が生まれちゃいそうだわ」
「そういうこともあるよね」
伝説のひとり歩きってあると思います。
「何を頷いてるの! 無しにしてちょうだい!」
納得して頷いてたらハウロン的には無しだったようで、小声で叫ばれる。
「滅多によその人間は来ないからね! 気を悪くしたらすまない」
住民に笑顔で手を振りかえしながらクリス。
「クリスは住民に人気なんだな」
しばらく故郷から離れていたはずなのに、こっちに気づいたみんなが手を振ってくる。
「僕がというか、家の人間は人気かな? 魔物が出れば積極的に倒しに行くから。それにこの辺りは栗色の髪がほとんどだからね、目立つんだよ!」
自分の頭を指で指し、ウインクしながら言う。
家族全員クリスみたいな性格なんだろうか。
そしてイーズ家到着、結構大きいお屋敷。まあ、この人数の宿泊が可能なんだから大きいのは分かってたんだけど。
「いらっしゃいませ、イーズ子爵家へ。荷物はここでおろして、馬をこちらに。クリス様、お帰り。時間通りだな」
ネクタイにベスト姿なんだけど、胸のボタンがはち切れそうなムキムキさんに出迎えられました。
「ただいまセバスチャン。お土産をたくさんいただいているよ」
セバスチャン!?
「クリスって子爵だったんだ」
あとセバスチャンって執事ですか?
「僕ではなく、子爵は親のことで、次代は末の弟さ! それに他の国の階級と比べたら、扱いは準男爵程度だよ」
笑うクリス。
文化水準が土地土地で違うんで、階級制度がまちまちなんだよね。でも屋敷って感じだし、すごいと思う。セバスチャンいるし。
クリスの家は末子相続なんだっけ? 確実に末っ子ってわけじゃなく、親が衰えてきた頃に成人する子供が相続する感じだったはず。
末子相続って財産が家畜とかで、分割が簡単な遊牧民に多い相続形態なんだよね。上の兄弟はさっさと羊もらって独立するみたいな。土地にあまり価値を置かない文化圏に多い気がする。
クリスの家は、さっさと独立して騎士を目指す感じだからなのかな? クリスも主を探してるんだろうか? 弟くんのリーズも主を選ぶために、あるいはいつか主に見出されるために、色々箔を付ける旅をしていた。
精霊の雫は無事に手に入っただろうか? あの湿地帯、進むの大変そうだったけど。悪気なく邪魔しちゃったからちょっと気になる。
セバスチャンも気になります。
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