第676話 血筋に憑く精霊もいる
クリスの家族に紹介され、それぞれ名乗る。
こう、弟君その1、その2。ティナの挨拶ににこにこして、アッシュの挨拶に固まるのやめろ。
確かに初めて会う人相手だからか、3割増し怖い顔になってるけど。せめて顔に出すんじゃない……それを言ったら、アッシュも緊張を顔に出すなってなるからしょうがないのか。
それはともかく、ディノッソは大人気ないからティナに頬を赤らめた弟2人組を威嚇しないように。俺が言うまでもなくシヴァに肘鉄くらって笑顔に変えたけど。
クリスパパの名前ジョーンズ、クリスママはリンディ、弟2エルン、弟3サミル。不在だけれど、弟1リード。
「私とリードの名は母方の祖父母から音をもらったのだよ」
とクリスが言う。
母方の祖父母から第一子、二子が名前の一部を継ぐことがこの島の伝統なのだそうだ。顔は父母からバッチリ受け継いでるから名前は他からなんだろうか。
それはともかく家族それぞれに顎精霊がいる。
お父さんとサミルとクリスの顎精霊はうっとりと顎の割れ目をなぞり、お母さんとエルンの顎精霊は顎のラインを愛おしそうになでる。
縦になでるか横になでるか? この精霊ももしかしなくても個体が強くなるんじゃなくって、増えるタイプの精霊だな……!? 無駄にシンクロ率すごい。
あっ! ここでもう一匹精霊の乱入!
末っ子サミル君の顎を、後から来た滑らか好きタイプの顎精霊がなで始めた! ――元々いた割れ顎好き精霊が対抗するかのように割れ目を高速ぐりぐりし始めたんですが。
そしてそれを微笑ましそうに眺める他の家族の精霊たち。俺だけこれ見えてるの辛いんだけど。
やっぱりハウロンは精霊見えた方がいいんじゃないかな? オアシスで俺といつか同じ風景見ることに同意しかけたしね。
とか思ってたら、サミル君が倒れそうになったところを隣のエルンが抱き留めた。
サミルは病弱というだけあって、線の細い少年。エルンは少年らしい体型ではあるが、筋肉が張っているように見えるので鍛えてるのかな? なんかサミル君を抱き止めるの慣れてそう。
でもこれ、タイミング的にサミル君の体調不良に精霊が絡んでるやつ。
「サミル無理をしたのかい?」
クリスが心配そうに声を掛ける。
「さっきまで大丈夫だったんだけど、急に……。せっかく兄さんの友達から兄さんの話を聞けると思ったのに。お騒がせしてごめんなさい」
さっきとは打って変わって血の気の引いた顔で謝るサミル君。
ハウロンの顔を窺い見る俺。大賢者の出番じゃない? 顎をどうこうは見えてないと思うけど、光の玉は見えるんだよね?
「クリスの家族は精霊に愛されているのね? でも、どうやらそれが少年の負担になっているようだわ」
サミル君をじっとみていたハウロンが口を開く。
「弟のこれは精霊が原因なのかい?」
クリスがハウロンを見る。
「『精霊の枝』でも神殿でも見てもらったのだが、そんなことは一度も……」
「ええ」
お父さんとお母さんが夫婦で顔を見合わせる。
「最初から一緒にいた精霊と、具合が悪くなったタイミングで近づいてきた精霊がいるの。おそらく後からきた精霊が原因だと思うのだけれど……。精霊が何故そんないたずらをするのかは、調べてもわからない場合も多いのよね」
小さな吐息をもらすハウロン。
顎、顎が気に入ってるからです! そして対抗して高速ぐりぐりなでなでしてるからです。
頭を瞬間的に強く揺らされて脳震盪起こしてるんだと思う。ボクサーが顎を殴って、首の骨と繋がってるとこを支点にして『てこの原理』で頭を瞬間的に揺らすあれです。あれだと思います。
いっさい外にはあらわれてないけど、揺らされてる。今は心配しているのか、精霊は揃ってそっと優しく触れているだけだけど。
――でも、なんで顎が割れてるのに滑らかライン好き精霊が寄ってきてるんだろう?
「話は後に。サミル殿を休ませてからでも遅くないだろう」
アッシュが言う。
「ああ。昨日今日始まった体調不良ではない、まずはサミルをベッドに」
クリスがそう言うと、クリスパパがサミルを抱き上げる。
「挨拶途中で申し訳ないけれど、すぐ戻りますので大賢者様のお話しを聞かせてください」
クリスママが頭を下げる。
セバスチャンがドアを開いて道をつくり、クリスを除く家族が部屋を出てゆく。
セバスチャンも他の使用人に指示を出しながら足速に出ていったので、この部屋にいるのはカヌムから来たみんなだけ。
「ちょっと、どうなってたの?」
ハウロンが俺に聞いてくる。
「すまない。そんなつもりで家に誘ったのではないのだけれど、教えてくれるかい?」
クリスが真剣な顔で俺を見る。
どうしよう、どう話しても不真面目っぽくならないかこれ? 困るんですけど。
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