幕間①

私はこの文章に何の感想を言えばいいのだろうか。


文章は文字が所々汚くて、まるでメモを取る様な字になっている。行、並び、句読点の位置。これら全てにおいても大雑把過ぎる。

けれども書いた人間の意思はよく伝わってくる。

「店長はこのノート読みました?」

「俺は活字なんかよう読めんじゃけぇなぁ、あんさんらのように字に触れっぱなしの生活はしてへん。それに第一人のモンよう触らん。強いて言うんやったらシフト表と予定表、あとは趣味で株見る位。」と各地の方言でコスプレしたような返事をした。


「ところで店長はTwitterとかSNSは…」

「あー、ネットってよく情報が漏れるとか、トラブル巻き込まれるとかあるからのう…って、ついこの間まで思てたんやけんども店の宣伝も兼ねてTwitter始めたんやわ。それとついでにFacebookやInstagram、今流行ってるかは知らんけんどもmixiも始めてん。『新入りの子が自分はネットに強いです』とか言うてたから色々聞いたり、調べたりしたんやわ。まあそれが上々で…」

「どれくらいお客さん増えました?」

「そこは企業秘密で。」とニヤニヤする店長。


こういう人は大体自分に聞いて欲しいという予兆がある。


「へえ…実は実は…」と私。

「ここだけの話なあ、この店のバイトの子にまかないの混ぜ込みご飯やってるんやけどお…」

「やけど?」

「それにぃ…」

「それに?」

「なんとぉ…」

「なんと?」

「焼き鳥の肉も混ぜられるようになったねん!」

「うっ、、、。そ、それはどう捉えれば…」

グフフフ、っと店長は少し泡の残ったジョッキを洗いながら笑っていた。

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酒呑の川 東雲退 @Sinonometai_0

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