第15話 素敵なプレゼント

 3/4 木曜日


 学校から登校自粛を命令された俺達は、卒業式まで自宅に閉じこもる羽目になった。

 相吉澤の事件については今も全く分からない。犯人もトリックもさっぱりだ。情報が足りなすぎる。


 そして当然上道かんだちくんの方も分かっていない。ピーナッツアレルギーによるアナフィラキシーショック。食べ物にピーナッツを混ぜ込めば完成という簡単なものだが、そんなもの推理側にハンデを与えているようなもの。

 何故なら、食べ物を作った人が犯人だと教えているからだ。

 両親がそんな事をするのだろうか? いや、家庭環境がどうとかそういうのじゃないだろう。


 これもまた今までの事件と繋がっている。だが、どうやってピーナッツを仕込む? やっている事は毒と同じだが、俺達は中学生。バイトは出来ない。

 例えデリバリーだとしても食品に触れられはしないだろう。


 1つ溜息をつく。

「分らん。昼飯買いに行こう」

 外に出れば何か気づけるかもしれないし。



 道路はまだ雪を残している。風が吹けば身震いしそうだ。

 近くのコンビニに着くと、デニムパンツにベージュのトレンチコートを着こなす山原がいた。

 どうやら彼女も昼飯を買いに来たという。


「この後、どこか行くのか?」

「ううん。このまま帰るの」

「送るよ」


 回答を聞かず道路側に立つと、左耳に純白な真珠のイヤリングを付けていた事に気が付いた。


「良いイヤリングだね。似合ってる」

「そうかな。ありがと」


 顔を道路の逆側に向ける山原。彼氏でもないのにそういう事いうのマズかったかな。


「実はこれ石上くんの最後のプレゼントなんだ。これだけは大切にしないとって思ってさ」

 素晴らしい愛情だ。俺が入り込む隙がない。


 前を見ると、そこには普通よりかは長い階段がある。こちらから見ると下りだ。

 その階段を1段下る所で山原が左耳を抑えた。大丈夫かと聞く前に山原が凍結した氷に足を滑らせ、階段を背に宙にいた。


 俺は咄嗟に飛びついて、山原を捕まえ階段に背を向けた。山原を離すまいと強く抱きしめる。

 途端激痛が背中に走る。食らったことのない一撃。普段の生活では感じることのない痛みに負けそうになる。


 更に勢いよく飛びついたからか、一度地面に付いた後、また宙に浮いてしまった。

 どうするか悩んでいる時に、山原が階段に背を向けはじめた。そして、涙を上に流しながら1言呟き、一緒に階段から落下した。



     enigma object end




 あとがき


 この度、このような拙作にお付き合いいただきありがとうございます。序盤、事件が解決しない作品を書いてみたくて、これが生まれました。

 かなり適当に作っちゃった部分もあるので、納得行かないところ等ございましたら、コメントに残してくれるとうれしいです。


 この後どう進むのかは“ざっと”構成しているので、気が向いたら続き書きます。

 といっても解決編になるので、もう謎は出てきませんが(嘘)

 それではまた読んでいただける事を願って去ります。じゃね!

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決められし残しもの 神城 希弥 @kohasame

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