第4話【新世界】

あの日ーーー








世界が、壊れてしまった日。








僕たちは、確かに学校の屋上にいた。








そして、今もこうして屋上にいる。理由は、分からないけど。僕たちは、この場所から出ることが出来ない。










………きっと、ここで死んでしまったからだろう。








肉体は滅びても、僕たちの魂だけが、この場所に囚われている。










男「大丈夫?」








女「うん。平気」










僕たちの前には、果てのない砂漠が広がっていた。終わりがきた世界は、恐ろしいほど静か。人間も動物も。一匹の蟻ですら、この世界にはもういない。










男「恐い?」








女「………恐くない」








男「嘘だ。震えてるよ」










小さな体が、さらに小さくなり、今も何かに怯えていた。










女「私たち、死んだの?」








男「うん。……たぶん」








女「…………そう…だよね」








男「ごめんね。僕が、屋上に呼び出したから」








女「ううん、いいの。気にしないで。ここに来たのは、私の意思だし。きっと、どこにいても生き残れなかったよ」










卒業する前に、どうしても君に伝えたかったこと。








言うタイミングは、きっと今じゃない。だけどーーー










男「………好きなんだ。こんな状況なのに告白してごめん。でもさ、でも」










女「うん」










容赦のない朝日が、砂漠の海を黄金に染めていく。目を開けていられないほど眩しかった。










数秒後、再び目を開けるとーーーーーー










彼女の姿が消えていた。どこを探しても見当たらない。












僕は、本当に一人になってしまった。この誰もいない壊れた世界に一人。言葉に出来ない孤独感。








唯一の救いだった君は、もうこの世界にはいない。










僕に残されたのは、最後に見た彼女の笑顔だけ。




僕は、彼女との思い出にすがって今も屋上に立っている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

恋と果実 カラスヤマ @3004082

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ