このスマホ依存症どもめっ!液晶がどうなってもいいのか!
ちびまるフォイ
けして手放してはいけない相方
「動くな! これが目に入らないか!」
「ああ、どうか! どうかそれだけは!!」
「このスマホがどうなってもいいのか! それ以上近づくんじゃねぇ!!」
「やめてください! スマホを返してください!」
「動くなって言ってるだろ!」
「ああああ! 液晶の保護シートに空気の穴が!!」
「これでわかっただろう。これは脅しじゃないんだ。
妙な動きをしてみろ、このスマホを叩き壊すからな」
「妙な動きというと?」
「今みたいにタップダンスするとか、警察に連絡するとかだよ!
もう動くんじゃねぇぞ。画面にヒビ入れるからな」
「勘弁してください。スマホはもう手放せないんです。
あなたはいったい何が目的なんですか。世界征服ですか」
「金だよ金。あとこの世の中からスマホ依存症を救いたい」
「荒療治すぎますよ! それに僕はスマホ依存症じゃありません。
ただちょっと、スマホに必要なデータが全部入っているので手放せないだけなんです」
「そんなことはどうでもいい。
ここで金が手に入ればいいし、入らなくても
スマホを壊すことであんたの依存症を治すことができる」
「お金なら払います! ですからどうかスマホだけは!
そこには大事な写真と、大事な動画と、大事な連絡先があるんです!」
「いいだろう。では100万円を持ってくることだ」
「そ、そんな大金用意できません!」
「だったら金でも借りて用意しやがれ!!」
「いや用意はできるんですけど、支払いはすべてスマホなので
スマホがないとお金を引き出せないんです!!」
「……え?」
「ですから返してください!」
「っと、危ねぇ。そんな手に引っかかるかよ。
お前にスマホを返すわけ無いだろう」
「返してくれなくちゃお金もお支払いできません!
……あ、そうだ! それなら私の支払い権限を差し上げます!」
「支払い権限?」
「私の決済アカウントを差し上げます。
それならいくらでも引き出せるしお金が手に入りますよ」
「なるほど。それなら……って、その手にも引っかかるか!!」
「WHY!?」
「決済したときにデータが収集されてすぐに場所を特定されるだろうが。
そんな足のつくヘマはしない。現金だ! 現金をもってこい!」
「ご自分で現金をスマホで引き出せばいいじゃないですか!」
「それも足がつくんだよハゲ!」
「ではどうしろと!?」
「待てよ、お前このスマホには大事な連絡先が……とか言ってたな?」
「な、なにをする気ですか!?」
「お前が支払いできなければ他のやつに支払ってもらうだけさ。
さて、連絡帳のどいつに金を持ってこさせるかな」
「やめてください! 他の人を巻き込まないでください!」
「まあ、嫁が一番いいだろうな。
--もしもし? 今、あんたの夫のスマホを人質に取っている。
ちげーよ、メリーさんじゃない。
スマホを失って食いっぱぐれたくなければ現金をもってこい」
「ああ、妻は巻き込まないでください」
「ダメだね。俺にとっては金さえ手に入ればどうでもいい。
それがお前の金だろうと、嫁の金だろうとそこに差はねぇんだよ」
「あなた!!」
「ずいぶん早い到着じゃないか。それで、金は持ってきたんだろうな」
「はい……これで、よろしいですか?」
「よしよし、ちゃんと現金で持ってきたようだな」
「おい! 待て!! 僕のスマホはくれてやる!
だから、妻の金だけは渡せない!!」
「あなた……!」
「何いってんだお前。さっき言ってたじゃないか。
このスマホには大事な情報がたんまり入っているんだろう?
これを失えば日常生活にも仕事にも支障が出まくるんだろう?」
「ああそうだ……。だが、妻が必死に稼いだお金を渡す程の価値じゃない。
妻を悲しませるくらいなら僕は喜んでスマホを差し出そう!」
「あなた私のために……!」
「さあ、犯人! そのスマホはくれてやる!
気の済むまで、あとかたもなく、復元できないほど壊すがいい!!」
「……」
「さあ! どうした犯人! 壊すんだろう!? さあ早く!!」
「……負けたよ。あんたの妻を思う気持ち、痛いほどわかった」
「え?」
「俺は金に目がくらんで本当に大事なことを忘れていた気がした。
金よりも大事なものを、お前らは持っているんだろうな。
金はいらない。スマホは返そう。さあ、受け取ってくれ」
犯人は涙を流してスマホを差し出した。
世界は平和に包まれた。
「あなた。ところで、壁紙に設定している写真の女は誰かしら?」
慰謝料は妻の元へスマホ決済された。
このスマホ依存症どもめっ!液晶がどうなってもいいのか! ちびまるフォイ @firestorage
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