<<夜勤病棟>>

<<夜勤病棟>>

夜寝る前、勤務時間交代で看護師さんが見回りに来てくれた。

「じゅりさん、今日の身体の調子はどう? お通じはあった?」

いや、ここ隔離室だし~。広さは6~8畳くらいあったけど、運動するスペースなんてないし~。

私は少々八つ当たりをした。

「殆ど運動してないんだからお通じなんて出ないですよ」

「そうだったのね」

看護師さんは何故か私のベッドの上に、持っていたものを並べている。

ノートが一冊…。


私の顔から思わず血の気が引いた。

表紙に大きな字で「夜勤病棟」と書かれていたのだ。



反射的に伝説のパソコンエロゲ「夜勤病棟」を思い出したのだ。あれって私は見たこともやったことないけど、相当過激なんだよね?

しかし、現実の恐怖は速度を上げて更に上を行く。

「じゅりさん、浣腸の用意できたよ~っ!!」


一瞬周囲を見回したが、ここは隔離室だ。逃げ場はない…。


「ギャアアアアアアアアア!!」

私の悲鳴が部屋中になり響いた…。


全部終わってから、看護師さんが

「じゅりさん、神経が細いわねぇ。私だってここで浣腸されたことあるけどそこまでショック受けなかったよ」

「は?」

浣腸ショックで涙目になった目を拭いていた私は、話が解らなくて、聞き返した。

看護師さん曰く

「定時になったので帰ろうとしたら何だか頭が痛くなってね。そしたら師長さんが

いきなり体温計を私のおでこに当てて、

「『風邪ひいてるわね。お薬入れてあげるから待ってて』」

"入れる?"

看護師さんも反射的に逃げようと思ったらしい。しかし、解熱剤のカプセルの薬瓶を片手に近づいてきた師長さんは看護師さんをあっさり捕獲。

低い声で

「さぁ~、観念しなさい!!」


「こうして、私は自分の上司に浣腸されてしまったのよ!」

私は吹き出しそうになるのを必死にこらえた。まだ聞いておかなければならないことがある。

「ひょっとして男性看護師さんに浣腸されることもあるんですか!?」

「そういうのはさすがにないから安心していいよ」

ほんとかよ…。信じて良いの…?



あとで、私より入院生活の長い先輩患者さんが教えてくれた。

「浣腸剤は、自分で管理するってナース・ステーションで言えば、大体渡してくれるよ」

要するに患者さん共通の真剣な悩みなのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る