<<洗濯大王>> ①第1病棟編
第1病棟では、患者の服の洗濯は面会人がすることになっていた。
しかし土日にしか来れない主人にはそうそう都合良く面会に来れず、私の洗濯物は看護師さんが代わりにしてくれていた。洗濯物は自分のキャビネットの上に置いてある80リットルサイズの黒ビニールのゴミ袋に入れておき、袋が一杯になったら看護師さんに洗濯をお願いすることになっていた。
入浴後の濡れタオル等、洗濯物を病室に干すことは禁止されていたので、濡れたままビニール袋に入れねばならず、においがしないか、カビが生えやしないかと心配でたまらなかった。私が第1病棟にいたのは9月後半、まだ残暑の残る頃で、衣服なども一度身につけたものは汗ばんでいる感じがして、気持ちが悪いので洗ってしまいたいのだ。
隔離室からHCUに移り、私はお風呂の奥にPanasonicの洗濯機と日立の乾燥機を発見!
入院中は何故か昔の勤務先への愛社精神で一杯だったので、日立のロゴを見るだけで嬉しくなって、暇な時によく乾燥機、特に「HITACHI」のロゴを見に行ったものだった。「もう自分の会社にはウンザリ」と思って寿退職したのに、人間何が心の支えになるか解ったもんじゃない。
しかしこれ1台で第1病棟の患者さんの分のお洗濯を全部処理できるのだろうか?
隔離室は10室、HCUは3室、個室は8室。定員21名。洗濯機はともかく乾燥機はフル回転だろ、とか思ってたらやっぱり看護師さんに叱られてしまった。
「じゅりさん、洗濯物多すぎ! 午前2時までかかっちゃったんですよ!」
個人的にはこの病院に寝泊まりするようになってから一番ムカついた。
「そんなことならいっそ私に患者さんの洗濯役やらせろ、バカヤロー!!」
と私は自室でこっそり暴れたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます