<<病院のお洒落>> ③シュシュ

以前、日暮里でリバティプリントの生地を売っているお店を見つけ、手芸好きの大阪のお義母さんのために、お裾分けでいくらか端切れを買った。お義母さんはリバティをパッチワーク風に使った可愛いデザインのシュシュを作ってくれた。

第1病棟にて、私にとっては謎に満ちた入院生活が始まったとき、私が欲しがったのは義母の作ったシュシュだった。義母はそれはもう心配してくれて、いくつもいくつもシュシュを縫って送ってきてくれた。

私は義母シュシュを毎日とっかえひっかえ、髷の位置も変えたりして楽しんだ。インテリア代わりにナースコールにぶら下げててみたりした。殺風景な病室が、シュシュ一つでグッと和むものになる。ここは自分の部屋だ。そんな気になる。

その内私は気がついた。女性看護師さんが皆シュシュをつけているのだ。

もしかして私がつけてるから流行ったのか? いや、そんなことはないか。


第2病棟でもシュシュは目を引いた。

「じゅりさん、シュシュの材料ってどこで売っているんですか」

患者女子のIさんに真面目に訊かれて、頭が真っ白になってしまって思わず日暮里繊維街の地図を書いてしまった(日暮里には私が行っている精神科クリニックがあるため)。

トーカイとかオカダヤとかユザワヤとかと答えれば良かったな~、今考えると。


後で主人から病棟差し入れの規則などを聞いたら、アクセサリーの類の差し入れは基本NGだそうな。シュシュが許可されたのは安全性が高いからかもしれない。


今年こそシュシュの流行が終わるとも聞く。

しかし髪をまとめる実用的なもので、安全で、腕に通して一寸ブレスレット代わりにもできちゃうシュシュ。病院で患者が咲かせられる数少ない花なので、アクセサリーとして完全に定着して欲しいなあ。

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