閑話・天音 二菜はくじけない

『くっ……ふ、ふふふふ! 妹! 妹って言ったのあの子!!』

「わ、笑い事じゃありませんよぉお義母様!!」

『あははは! はー! お腹痛い! 八一さん聞いて下さいよ、あの子ったら……』


 私の名前は天音 二菜と申します。

 今、私は愛しの先輩のお義母様に相談中です。

 相談内容はもちろん、『先輩に妹扱いされたけどどうすればいいか?』です。

 あんなにかっこよく私を助けてくれて、花火の上がる最高のシチュエーション!

 目の前にはまじめな表情をした先輩!

 これはもう先輩からの告白しかない!


 そう胸を高鳴らせていた私に対して「妹みたいに思ってる!」ですよ。

 ……これを言われた私の気持ち、わかりますか!?



「ううう……これまで散々アピールしてきたのに、妹ですよ妹! 辛いですお義母様!」


 そしてこんな心境を吐露できるのは、もはやお義母様しかいないわけで……。


『大丈夫よ二菜ちゃん、あの子、かなり気持ちが揺れてるわよ!』

「そうでしょうか……妹扱いって、もはや女の子扱いからは相当遠いような……」

『安心なさい! 私が大丈夫って太鼓判押してあげるから!』


 お義母様はなぜ、こんなに自信があるのでしょうか?

 やはり、私の知らない先輩の姿があるんでしょうか?


『ふふっ……だってね……八一さんも、全く同じ事を私に言ってたのよ!』

「ええっ!」

『やっぱり親子なのねぇ……くっ、ふふふ……何も同じことしなくていいのに……!』


 まさかのお義母様妹扱いに驚きます。

 というか、親子で同じような発言をしているなんてビックリです!



『あの時は私も悩んだわ……色々やったあとだっただけに……』

「ぐ、具体的には何を……?」

『一般的な恋人らしい事はなんだってやったわ……朝の添い寝から、お風呂のお世話まで……』

「お、お風呂……! 一緒に入ってたんですか!?」

『ふふ、八一さんが入った後に、お背中お流ししますーってね!』

「ふおお……すごいですおとなです……!」

『何言ってるの、やってたのは二菜ちゃんと同じ年の頃よ?』

「そうでした!」


 驚きです、私も色々やったつもりでしたが、お義母様に比べるとまだまだ足りていないと気づきました。

 恥ずかしがっている場合ではありません、明日の夜は、絶対に先輩のお風呂にお付き合いしましょう!!


『で、そんな時に言われたのよ……「花七さんは妹みたいなものだからね」って……』

「心中、お察しいたします……!」

『ふふふ、そりゃ当時は凹んだわー……でも、ふとあれって思ったの』

「何がですか?」

『ねぇ二菜ちゃん、今日の一雪、ちょっといつもと違うなって思わなかった? 例えば……自分から、二菜ちゃんに触れてきたり』

「そういえば……」


 あれっ……先輩から率先して手を繋いでくれたのって、今日がはじめてだった気が……。

 いつも、私から先輩の手を取ってましたし……なんとも思ってませんでしたが。


「……あと、可愛いとか、綺麗とか、あんな風に初めて言われた気がします……」

『あっははははは! あー、もうだめ、おなかいたい!! 八一さんと全く同じパターンじゃないの!』

「お、お義父様はそれまでと、どう変わったんですか……?」

『それまで一歩引いてた態度だったのが、急に距離感が近くなったのよねー……思えばあの頃から、ぐっと仲が深まった気がするわ……』


 なんと! 妹扱いから仲が深まる!?

 意味がわかりません、藤代のおうちでは妹とは特別な存在なのでしょうか?

 俄然、やる気がわいてきます!



『八一さんったらねぇ……なんで妹なのかって後から聞いたら、なんていったと思う?』

「わ、わかりません……!」

『「妹って事にしておけば、面と向かって可愛いとか言っても許されると思った」ってそんなわけないでしょー!』

「そんなわけないですー!!」


 なんですかそれ!

 もっと普通に可愛いとか言ってくれてもいいんですよ!?


『もっとはっきり言って欲しいって思うのは当然よねぇ!』

「は、はい!妹扱いより全然嬉しいです!!」

『まぁ、八一さんもそうだったけど…はっきり言っちゃうとただ照れてるだけなのよ』

「せ、先輩が照れてる……? そうなんでしょうか……」

『それも、藤代の血なのかしらねぇ……どう思います八一さん?』


 電話の向こうから、お義父様の「わ、わかりませんよそんなの!」という声が聞こえてきます。

 それよりも……照れてる……えっ、先輩が?

 私に照れてる??

 やだ、どうしましょう、今、物凄い顔してるのが鏡がなくてもわかります!

 ヤバイです明日の朝までに私の顔が戻らなかったらどうしましょう!?



『むしろ心配なのは……』

「?」

『八一さんと同じなら、明日から二菜ちゃんのこと、物凄く甘やかしてくるようになるわよ』

「せ、先輩が甘やかしてくれる……」


 ちょっと想像してみただけで、それはとんでもない幸せ空間に思えてきました。

 ど、どこまで甘やかしてもらえるんでしょうか……ドキドキします。


『いい? 気をしっかりもつのよ、二菜ちゃん!』

「は、はい、ありがとうございます、頑張ります……!!」

『あ、あと今後、多分スキンシップが物凄く増えるわよ』

「すきんしっぷ」

『私たちは別にいいけど……まだ学生なんだから、避妊はしっかりね!』

「お、お義母様ーー!」

『あと、あんな子だけど一雪をよろしくね、二菜ちゃん……じゃあ頑張ってね、未来の私の義娘ー♪』


 と、とんでもない事を聞いてしまいました……。

 あ、あれっ、これ戻ったどころか、物凄く進展したのでしょうか?


 ……まだ、私の戦いは始まったばかりなのかもしれません。

 明日に向けて、私は戦いの準備を始めるのでした……。


 ま、まずはいつ見られてもいいように、しっかり肌のお手入れから……!!






 でも、それはそれとして。

 今日の事は、いつか絶対やり返しますからね、先輩!!


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