え?誰の誕生日ですって?
楽しかったGWも終わり、またいつもの日常が帰ってきた。
相変わらず天音は付きまとってくるし、周囲の男性特にイケメン君の
視線は人を殺せそうだし、散々である。
「GW、お楽しみだったようだね一雪」
「お楽しみじゃねぇよ、朝から晩まで振り回されて大変だったっつーの」
夜から明け方まで、ああでもないこうでもないといいながら映画を見て。
昼まで爆睡したら、起きて天音の作った昼飯を食い。
そのまま次の映画を見て晩飯を食べ、また映画。
なんだかずっと映画を見ていた気がするぞ……いや有意義な時間であった!
「その割には、楽しそうにデートしてたみたいだけど?」
「おい待て、それ誰に聞いたんだよ」
「あら、知らないの一雪? あんた達結構話題になってるのよ」
話題……だと……!?
確かに、あのあたりならこの学園の生徒に見られることもあるだろう。
だからといって、そんなに話題になるほどなのか!?
「それだけ、天音さんに話題性があるってことだよ」
「む……」
「二菜ちゃんがどんだけ人気ある子なのか、あんたまだ理解してなかったのね……」
「そんな子が、休日に男と手を繋いで嬉しそうに歩いてた……なんて話題性抜群だと思わないかい?」
「しかも、普段男子にそっけない態度のあの天音さんが! の付加価値付きよ」
そう言われると、確かに話題性は強いように思える。
そしてあの日の自分の行動を思い返して、さらに戦慄する。
た、確かにあの日の俺たちは、話題になってもおかしくないかもしれない……。
「ちなみにあの日、僕たちもあのあたりを歩いてたの、知ってる?」
「ビックリしたわよね……まさか、一雪が二菜ちゃんと手を繋いで歩いてるなんて……」
「親友の僕も、君が成長してくれたようで鼻が高いよ……」
「見かけたんなら声掛けろよ!」
俺たち友達じゃなかったのかよ!
くそぉ……人のことを玩具みたいに思ってるなこいつら!
「そりゃ、こんな顔して歩いてるのに、邪魔できるわけないでしょ?」
そういいながら音琴が取り出したスマホに映し出されたのは、まさにGW中の俺たちの姿だった。
というか何当たり前のように写真撮ってるんだ、こいつ!
「見なさいよこっちの男の顔、デレデレしちゃって、嫌ねぇ」
「これでまだ付き合ってないって言うんだから不思議だよね」
「「ねぇ?」」
「うっせ」
「ていうか、あんたじれったいのよ! もう付き合っちゃいなさいよ」
「それだけはない」
確かに、俺は別に天音が嫌いなわけではない。
だがそれとこれとは、話が別なのだ。
「まぁ、こればっかりは言っても仕方ないのかもしれないけど」
「僕たち的には、さっさとくっついて欲しいんだけどね?」
「今のところ予定はないなー……」
はぁ、と二人して溜息をつくのはやめろ。
そしてイケメン君は俺を睨むのはやめてくれ、俺に気があるのかと勘違いするぞ?
しかし、なぜそうまでして俺と天音をくっつけたがるのか、それがわからない。
俺と天音がくっつくことで、何らかのキックバックが発生でもするのか?
はは、まさか俺の親友に限ってそんなことはないよな、五百里?
ただし音琴、お前はダメだ。
そんなバカな事を考えていると、音琴が爆弾を落としてきた。
「そういえば、あんた二菜ちゃんの誕生日はどうするの?」
「え、誕生日? ……誕生日? え、天音って誕生日近いの?」
「もしかしてあんた……知らなかったんじゃないでしょうね」
「いや、なんのことだかさっぱり……」
誕生日? そういや俺、あいつのそういうことって何にも知らないな。
もしかして誕生日が近いのか?
「そもそもあいつ、そんな話一言もしたことないぞ……」
「そこは察してあげなさいよ……来週の今日よ、二菜ちゃんの誕生日」
「し、知らなかったそんなの……」
「普段お世話になってるんだから、ちゃんとお祝いしてあげなよ?」
「お、おう、そうするわ……」
しかし誕生日か。
女の子の誕生日なんて祝ったことないんだけど、何をやればいいんだろうな?
* * *
「で、天音は何が欲しいとか、そういうのってないのか?」
「え、なんですか急に……」
「まぁ、参考までにな。女の子って、何を貰うと喜ぶのかなって」
「なんですか浮気ですか私というものがありながら!」
「どうしてそこで浮気という方向に思考が跳ぶのか、これがわからない」
結局、どうすればいいかさっぱりわからなかった俺は、ちょっと内容をボカして
天音に欲しいものをたずねることにした。
これなら、間違えて変なものを買ってしまうこともないだろう、俺って頭いい。
「知り合いがちょっと、友達の女の子にプレゼントしたいって言うから、天音の意見を参考にしようと思ってな」
「そうでしたか、それなら……私だったらですが、先輩の愛が一番欲しいですね!」
「全く役に立たない意見をありがとう、他には?」
「うーん……先輩のサインいりの婚姻届?」
「ほんと君はブレないね」
「えへへ、そうでしょうか……先輩好きです、お付き合いしてください!」
「誠に残念ですが、諸般の事情により、お受けすることができかねます」
「なんでですかー!!」
ダメだこいつ、まったく役にたたねぇ!
やはり天音ではダメだ、明日五百里に相談しよう。
俺の頼れる味方は五百里しかいない……愛してるよ五百里……親友としてな!
「まぁ、冗談は置いておきまして」
「なんだ冗談か、ほっとしたぞ天音」
「婚姻届のくだりは冗談ではありませんが」
「一番冗談にしておいて欲しかった部分……っ!」
どうしてそういうクリティカルな部分を冗談にしてくれないのか!
うちの母さんが聞いたら、喜んで印鑑突いて持って来そうな気がして怖い。
出来ればうちの母さんには、知らないまま平穏な生活を送って欲しいものだ。
「その友達との距離感がどの程度かわかりませんけど、アクセサリーとかはダメだと思います」
「そうなのか? 女の子なら喜びそうに思うんだけど」
「それが彼氏彼女の関係ならいいんですけど、友達からもらったって引きますよ」
「なるほど……となると、食べ物とかなら大丈夫?」
「それよりも、普段使いに出来るちょっとした小物とかが喜ばれると思いますね」
ふーむ、小物、小物か。
普段も使える小物だと……ペンセットとか、そういうのか?
これなら貰っても腐ることもないだろうし、使えるものだからありがたがられるだろうか。
「私が先輩からもらえるなら、婚約指輪とかもいいと思いますよ♡」
「せっかくのお心遣いですが、お気持ちのみを頂戴したく存じます」
「なんでですかー!!」
その日、二度目の「なんでですか」が響き渡った……。
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