俺と後輩のちょっとした噂
結局、土曜日に続き、日曜日も天音の世話になってしまった。
というか、気がついたらなぜか家で料理を作っていた。
解せぬ。
さらに昨日も泊まるとか言い出したので、丁重に断って帰って頂いた。
真上の部屋なんだから帰れよ、全く。
遠方から来てるならともかく、真上に住んでるのに泊めてくださいはないわ。
言っておくがうちに金目のものはないぞ……!
そんな今日も朝から天音に襲撃され、一緒に登校してきたところなわけで。
はぁ、周囲の目線がマジで痛い……なぜ俺に構うのか……。
俺の平穏無事な学園生活はいつになったら帰ってくるんだ……!
「やぁ、おはよう一雪、週末は楽しめたかい?」
「おう五百里、お前のおかげで土曜は朝から大変だったんだぞ……」
「ふふふ、それは重畳。実はあれ、僕じゃなくて……」
「はいはい! 私が教えようって言いました!」
「お前のせいか音琴!!」
「てへっ」
「うっぜぇ……!」
こいつは音琴 六花|(ねごと りっか)。
俺と五百里とは中学時代からの友人で、今は五百里の彼女だ。
実は中学時代、明るい彼女に惹かれていた事があるのはここだけの秘密である。
もちろん、五百里も六花も知らない事だし、今後も言うつもりはない。
それに今は特になんとも思っていないし、五百里ともお似合いだと思っているしな。
……本当に思っているからな!? 嘘じゃないし特に修羅場ったりもないからな!!
「ていうか、何なの俺に何か恨みでもあんの君ら」
「いやー、なんか可愛い後輩に一雪が言い寄られてるって聞いたからさー」
「言い寄られてなんてねぇよ……」
「なんかいつまでたっても色恋沙汰の話を聞かない枯れた男をサポートしなきゃ! って思うじゃん?」
「思うなよ! しかも俺は枯れてないし!」
これでも人並みに女の子には興味があるんですよ?
ただどうしても彼女が欲しい! とか思わないだけで。
「まぁまぁ、それより知っているかい一雪、こんな噂が流れていることを」
「嫌な予感しかしねぇ」
「土曜日のお昼過ぎ、1年生のアイドル天音さんを連れた男が、二人仲良く調理器具を購入していたって噂が流れているんだよ」
「ぶふっ」
どう考えても俺のことじゃねぇか!
なんだよ誰に見られたんだよそんなところ……!
「一緒に調理器具ってもう通い妻どころか、同棲でもしてるんじゃないかって噂になってるよ?」
「最悪だ……どうしてそんなことに……」
朝から、物凄い圧力をあちこちから感じると思ったらそのせいか!
このクラスの中にも、やたらと血走った目の奴がいるから怖いんだよ……!
さ、刺されたりしませんよね?
「ちなみに、その現場を見たのは私で噂を流したのも私だ!」
「ほんと最低だなお前!?」
なんだよやっぱ俺に恨みでもあるのかよ音琴!
あんなにジュースやらごはんやら食べさせてやったのに恩を仇で返しやがって……!
「もう諦めたらどうだい一雪、いいじゃないか何が不満なんだい?」
「そうだそうだー、あんな可愛い子、一雪にはもったいないくらいなんだぞ?」
「……俺もほんと、そう思うよ」
そう思うからこそ、天音の気持ちには応えられない。
あんな可愛くて人気のある美少女が、俺なんかを好きになるわけがないのだ。
自分があんな美少女に好かれるような人間じゃないのは、自分が一番よく分かっている。
だからこそ。
だからこそこえぇんだよ!
うっかり好きになんてなっちゃって『え……何本気にしてるんですか怖……』
とか言われたらどうすんだよ! もう女性不信で立ち直れねーよ!!
あ、私宗教の理由でお参りとかできないんですよとか言われたらどうするんだよ!
そんな時どんな顔すればいいかわからないよ……!
「笑えばいいと思うよ」
「間違いなく苦笑いですねわかります」
「まぁでも、そう遠くないうちに一雪はあの子に落ちるだろうとは思ってるけどね」
「さっさと落ちて、GWはみんなで遊びに行こうよーねぇ一雪ー」
「落ちねぇ! こら揺らすな音琴!!」
やめろ、頭を掴んで揺らすな! このゴリラ女め!!
「まぁ、何かあったら僕らに相談しなよ、お金以外なら助けてあげるから」
「あと、怖いお兄さんに絡まれてるから助けても無理だからね!」
「それが一番怖がってる展開なんですが?」
ほんと、役に立たない奴らだよまったく……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます