第2話 一難去ってまた一難⑵



「お願いだよ! うちの部に入ってくれ!」


 多分ダーツか阿弥陀で適当に決めた、みたいな感じの人選だったんだと思う。俺がウキウキで牛そぼろ弁当を食べていたとき、そんな言葉とともに知らない連中に引っ張られていったのは、高二の初めくらいのことだった。

「うちの部活人数足りなくてさぁ」

 などと言われ、断れない性格なので、「いいよ」と言った。断って変な罪悪感が残るのは嫌だったし、それでまたいじめられたら面倒臭い。断ってデメリットを被る面倒臭さと、入部する面倒臭さ、天秤にかけたらどちらに傾くか、という問題だ。俺はその部活のことをほぼ全く知らないまま入部届けにサインした。

 しかし俺にも予想外のことがそれから起きる。俺はその名も知らないグループの、部長になってしまったのだ。


「三年はほら、受験勉強で忙しいしさぁ」


 事あるごとにさぁ、さぁと、なんですか卓球選手ですか? と言いたくなるような先輩たちだった。オカルト研究部なんて、やっていたってやっていなくたってさして人生変わらなそうなのに、どうしてそこまで残したがるのか、俺には理解不能だった。今いる部員もそのほとんどが、他の部活とかけもちをしてそっちを本業にしている幽霊部員だそうだ。俺が元々部員であっても、さっさとこんなところやめて、廃部にしてしまっていただろう過疎っぷりだ。でも頼まれたら断れないのが俺の性格。


 だから今日も、放課後に部室で一人、興味もないオカルトの研究をする。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る