〜9(Epilogue)・初仕事完遂〜
初仕事を成功で終わらせ、武器等を返した縁に藪内が指示したのは一応の病院での検査であった。パワードスーツを着ていたとはいえ盛大に殴られたり蹴られたりしてるので骨折などがないとも言い切れない。幸いにも検査の結果多少の痣や傷はあったものの重篤な損傷はなかった。
「んんっはぁー、やっと終わったー!課長は少し心配しすぎだけどなんともなくてよかった!」
1時間近く缶詰にされてやっと解放された縁はググッと伸びをする。彼女はあまりじっとしているのは好きな方ではない。
るんるん気分でゼロ課のビルへ入るとエントランスのベンチに晴れた空のように青く長い髪を持った少女が足をプラプラと振りながら座っていた。
「あっ!縁ちゃんおかえりー!」
「瞳さん!ただいまです・・・でいいんですか?」
瞳が縁を見つけると元気にブンブンを手を振りながら呼びかける。
「大丈夫だった?」
「はい。多少の痣と擦り傷くらいで大きな怪我はなかったです。」
「タフだね!肩アーマーが削られてあちこち凹んでだから最悪骨折数カ所と肩に大怪我かなって予測してたんだけどね。やるねぇ!期待の
「あはは・・・ありがとうございます・・・」
純粋故に結構酷いことを言う瞳である。
「ところで瞳さんは何を?」
「ん?うん!りゅーくんを待ってるのー!」
「なるほど・・・あっ私行きますね!課長さんに検査が終わってなんともなければ課長室に来るよう言われてたんだった!」
「およよ?ごめんね引き止めちゃって。いってらっしゃーい!」
「はい!失礼します!!」
瞳と別れ、大急ぎで課長室へ急ぐ縁。目的地へ着く頃には少し息が上がっていた。息を整え、ドアをコンコンとノックする。
「どうぞ。」
と、中からの返答があったのを確認してから入る。
「失礼します!萱町縁!戻りました!」
「お帰りなさい。萱町さん。さぁさ座ってください。」
藪内はにこやかに迎える。
「検査は大丈夫でしたか?」
「はい!少し痣と傷があったくらいで・・・」
「それは良かった良かった・・・それと初仕事無事成功おめでとうございます!」
「ありがとうございます!!でも先輩と色々な方のお陰です!」
「そうですね。これからも頑張ってください。」
「はい!!」
藪内の優しい言葉に縁は元気に返事を返した。
「あぁ、それと・・・持病の頭痛は大丈夫ですか?」
「あっ・・・はい。毎日ちゃんと頭痛薬飲んでますし、副作用も少ないやつらしいので業務に支障はありません!」
「最近頻度が増えてませんか?」
「・・・ちょっと増えてます・・・でもやれます!」
「そうですか・・・いえ、支障が無ければいいのです。用事はそれだけです。お時間をとってすみません。これからも頑張ってくださいね。」
「了解です!!・・・あのー、課長・・・」
「黒井さんは今は眠っていますがじきに目を覚ますだろうということです。体には異常はないそうですよ。」
「そうですか・・・よかった・・・。はっ!すみません、ありがとうございます!頑張りますのでよろしくお願いします!!」
「いやいや、君の活躍に期待しているよ。」
縁は輝くような笑顔を見せた。それを見て藪内はまた微笑んだ。
*
縁は藪内との面談を終えてオフィスに戻ってきた。非戦闘系職員の数人がパソコンやタブレットを叩いたりして何らかの作業をしている後ろを擦り抜け、自分の席へと向かう。横の席には零次がぐっすり眠っていた。
「せんぱーい・・・戻りましたー・・・」
縁が一応声をかけるが起きる気配はない。彼女がため息をつきながら自分の席に座っていると、零次の机の上にあった電話が電子音を発した。その音が響くとともに零次の眉間にシワが寄ってきてめちゃくちゃ嫌そうな顔をしたが、渋々という感じで目覚め受話器をとった。
「・・・はい。ゼロ課の神薙です。・・・はい・・・はい、了解です。はい、すぐ向かいます。それでは後で。」
少し相手と話し、受話器を置いた。顔は相変わらず怠そうである。
「おい後輩。戻ってきたってことは大丈夫なんだろうな?」
「へ?ふぁい!」
突然話しかけられて少しぼーっとしていた縁ははっと我に返った。
「そうか。なら行くぞ。」
「む?事件ですか?」
「あーあぁ・・・めんどくせぇ。戦闘系職員じゃなくてもいい仕事をこっちに回してきやがった・・・うちは結構応援に回される時が多いんだが・・・」
「それでも仕事ですよ!頑張りましょ!」
「・・・はぁ・・・なんでこんな働き者の後輩を押し付けられたんだよ・・・」
キラキラとした目で彼を見つめてくる縁から目を逸らし、零次はため息をついた。
ゼロ課狂想曲 戯言遣いの偽物 @zaregoto0324
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