1-2
†
20XX/09/04
「ミヒロ! ミヒロ! おいM2、起きろ。大変だぞ!」
わたしの大事な大事なお昼寝を邪魔したのは、ダーニャこと〈DB〉の大声だった。
二段ベッドの下の段。お手製のカーテンが掛かったわたしのプライベート・スペース。しかし、それも彼女の手に掛かればすぐにパブリックな公空間に変わってしまう。布切れを集めて作った天蓋は、すっかり黒髪長身のバケモノに壊されてしまった。ダーニャははギョロリとした大きな目に――彼女はいつもこうなの。化粧が濃すぎるんだよね。それにいっつもゾンビかドラキュラみたいなカラコンしてるから、毎日がハロウィンみたい――で、わたしをにらみつけてた。
「ねえ、その名前で呼ばないでくれる。それ、〈メスゴリラ〉のことを思い出して吐きたくなるからさ。じゃなきゃあんたのこともダーニャじゃなくて、DBって呼ぶし」
わたしは眠い目をこすりながら、再びタオルケットにくるまろうとしたけど。でも、彼女がそうさせてくれなかった。今度はタオルケットまで引っ剥がしてまで起こそうとしたんだ。
「おいおい、寝てる暇じゃないんだってば」
「何よもう。日曜のこんな時間にわたしを起こしていいのは、大地震か大津波が起きたときだけなの」
「だから、一大事なんだって。あいつが帰って来たんだうよ。しかも、厄介ごとを引き連れてさ」
「あいつって誰よ? 地震? 津波?」
わたしは、その〈あいつ〉がいったい誰なのかうすうす感づいていたけど、あえて聞いた。確かめるみたいに。
そして返ってきたのは、想像通りの答えだった。
「エリスン。エノーラ・エリスン。あのアバズレが仕事から戻ってきたんだ」
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