第2話 クラン(のマーク)を作ろう
クラマスの憂鬱:クラン(のマーク)を作ろう
やっとの事でキャラを作り終わったクラマス、とは言ってもまだクランを設立してないのでクラマスではないが、面倒なのでこのまま行っちゃおう。
このMMORGにも少し慣れてきた感じでキャラを育て始めたところ、最近やけに目につき始めたのがクラメン募集の案内。
このゲームでは、前のゲームのギルドにあたる集団がクランと呼ばれると言うことは認識してはいたが、入ると何のメリットが有るのかが、今一つ解りづらくて特に気にはしていなかった、が、ここ最近やけに募集が目立つ気がする。
たまには、募集要項でも見てみるか、と掲示板を見て驚愕に捕らわれた。
何処のクランの募集にも妖精族が出ていない。いや有っても、要3スキル以上等と言うあり得ない募集要項しか出ていなかった。
そりゃ、精霊魔法もエルフかドルイドがいればカバー出来るし、森の賢者スキルも同様になんとか成る、などと考えてみれば本当に特異なスキルは空を飛ぶこと位、それも小柄の妖精族に限られる訳で、なかなか使い道が無いと思われるのも仕方ないが、この仕打ちはひどすぎる。
憤慨しつつ、色々と見て回ると何故最近募集が多く出ているのかが解った。
”セール!”
アイテムなどは時々あって認知はしていたが、クラン設立費用もセールがあるとは知らなかった。
とは言っても、決して安いものではなく、定価の半額とは言え手持ちでは全然足りず課金必須だ。
セールにつられてポチる所だったが、これで冷静に成れる。クランの優位性は、
クラン専用のルームが貰える、これはクラメンが増えるのに合わせて拡張される。
パーティーでの優位性、通常パーティーを組んだ場合、ソロの時よりも、殆どのステータス類が5%割り増しされる。
このパーティーに同じクランのメンバーが70%以上いる場合は、10%の割り増しがパーティー全体に適用される。
更にクラマスが参加している場合は、戦闘系の能力については、20%増しに成るらしい。ただしこれには引き替えとして、クラマスについては防御力はほぼゼロに成るが、戦闘後の経験値取得が参加者平均の倍に成るオプションを設定した場合の数字で、通常はクラマス参加によって15%増しということらしい。
クランのエンブレムを作って防具に貼ることができる。
クランだけが参加できるイベントが有ったり、クラン同士の戦闘で略奪を行えたり……
まあ、色々と有ることは解ったがまだ今一つ踏ん切れない。
あれ、説明書きの最後の方に、
”️今ならクラン開設者がクランマスターを続ける限り有効な特別スキル2つが付与されます”
え、これってめちゃお得じゃない、って訳でポチッてしまったクラマスでした。
問題はその後、クランとして成立させるには、最低3名の参加が必須とされており、30日以内に条件を満たさない場合は、自動的にクランは解散、設立時のポイントは返却となることが、作ってから判明した。
(実は重要なことなので小さく書いてあったのだが)
だから、クラメンの募集が乱立していたのかと、訳が判ったが、その競争の中に身を投じなければ成らなくなった事を、再認識しただけだった。
クラメンを集めるには、クランのアピール(紹介)をしないといけない。
もちろん、設立趣旨やら、今後の方向性やどんなキャラのクランか解るようにまとめなければいけない。
いや、その前にクランの名前を決めないと。
現在は”仮クラン127”とかが付いているが、例の期限までは修正自由だ、ただし以降は有料との事、取り敢えず登録してみることにした。
キーワードを入れると、同様な登録済のクラン名が、出て来るので被らなくて済むが、片っ端から入れる名前が被りまくってしまう。
”疾風”もだめ、”雷神”もだめ、”電撃”もだめ……
ことごとく思い付きのキーワードは被りまくったので、愛読書のページを開き、えいと指差した言葉は、”紅蓮”。
良いじゃん、入れてみよっとトライすると、被ってない。
今がチャンスだ、とられる前に登録と思ったが、”紅蓮”だけだと”愚連”と音が被る、何かつけた方が、と再度愛読書にお伺いをたてると、今度は”矢尻”。
”紅蓮の矢尻”しっくり来ない。
”尻”は外して、”紅蓮の矢”
しっくり来るー。
という事で無事登録終了。
次はクランの案内。
ここでクラマス(ここからは正式名)は募集掲示よりも一本釣りの方が早いのでは、と考えて前のギルドの知り合いがいないか、プレーヤー検索をしてみた。
が、見知った名前は余り無く、有っても既に他に所属済みだったりしていた。
きっと同名別人と諦めて、クラン要項に専念することにした。
すると、チャットで
「何してるんですか?」
と呼び掛けられた。
ふと気が付くと、ゲーム内の町の広場の端で、永遠と先程からの事態を繰り広げていたわけで、傍目で見ていたら、固まったか、寝落ちと思わせるような状況だろう。
そんな人物に声を掛けてきた物好きは、ダークエルフの青年だった。
クラマスは今の心境を、
”クランが乱立しているが、エルフが軽く見られているので、クラン立ち上げたが、四苦八苦している”
と素直に伝えた。
彼は少し考えてから、
「面白そうだから手伝いますよ」
と言ってくれたので、すかさずクランの招待を送った。
「知り合いもインしているので誘ってみますね」
といっている間に、クラマスはクラン入った彼をちゃっかりサブクランマスターに設定しておいた。
もう一人も入ってくれたので、さっそくみんなでクランルームに行ってみる。
教室位の広さの何もない部屋で明示的に有るのは、カレンダー(運営のイベントがデカデカと載っていて、自分達の書き込みも出来るやつ)位だった。
取り敢えず、クランの存続は出来そうなので、じっくりと考える時間が出来た。
クランの設立要項はクラマスが担当するとして、募集要項とエンブレムは二人にお願いすることにした。
サブマスが、絵柄のリクエストとか確認してきたので、クランの名前をイメージしていて、この3人から始まったといったモチーフが入ったシンプルなやつ、などと無理難題をお願いしておいた。
取り敢えずクラン関連の事は各自の宿題にして、パーティーを組んで廻ってみた。
フェアリー、ダークエルフ、ドワーフの三人組では、圧倒的に攻撃力が足りない事が判明しただけだった。
例のオプションを入れると、一撃でクラマスはやられるし、レベルの低さも相まって、戦士、騎士などの腕力系のリクルートを優先目標にと意見が一致した。
数日して、サブマスがエンブレムの案を幾つか持ってきてくれた。
1つ目は、
”燃えている三枚羽の矢がハートに刺さっている絵”
2つ目は、
”弓に燃えた3本の矢を引いた絵”
3つ目は、
”ハートをバックに三本の矢を握った手の絵”
だった。
どれも捨てがたいが、遠目にも解りやすいのは3つ目の絵なので、それを少しエンブレムらしくアレンジしてもらうことにした。
この時、クラマスに例のスローガンが天から降ってきたのは、サブマスの絵のおかげだろう。
”真実と情熱の矢こそが全てを打ち砕く、我らは一本一本の矢となりクランは弓と成ろう!”
ちなみにエンブレムの名称はどうします?と聞かれたので、見たままの”トライアローズ”にすることにした。
よし、後は人数を集めてクランの強化をはかるのみ、と思っていたクラマスには、この後入社に伴う研修やらなんやらという大事が控えていることををまだ知るよしもなかった。
クラマスの憂鬱 @ROTA77Z
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