超知性体によってタイムマシンが作られた近未来。人々はタイムマシンで気軽に過去へ行けるようになったが、下手に歴史を動かしてしまうとそのまま別の世界線へと移動してしまい、本来いた時間に戻れなくなってしまう。これではちょっと不便だ。そこで超知性体はあるシステムを作りだした。
それが緊急時間遡行(エマージェンシータイムリープ)。時間遡航者が歴史を大きく変えようとする動きをすると、強制的に30分前の時間に巻き戻されてしまう。これで安心して時間旅行を楽しめるというものだが、そんな決まりきった運命はまっぴらだという者もいる。
本作はそんな二人の高校生を主人公にした短編である。決まった運命から逃れようと自由を求めた結果、延々とループする30分のやり直し。二人はこの状況をどうやって解決するのかというのが読みどころの一つだが、それ以上に注目すべきなのが二人の会話だ。特別なことをしようとしているはずなのに、まるで日常の延長のような二人のやりとりが読んでいて心地よく、それがそのままラストの気持ちよさに繋がっていくのだ。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=柿崎 憲)