最終話
「おい、お前がパニクってどうすんだ、落ち着けよ」
俺の真後ろにいた、先程のいけすかない同級生アルファがため息をつきながら前に進み出て、
「いつまでも女の子を土下座させるなよ」
とオメガの女子を立たせ、他の女子や男子達も整列させる。
た、助かった。さすがアルファ、礼を言わないと。
「俺みたいな完璧アルファ男子ならともかく、こいつみたいな凡人を選んでもメリットゼロだろ。みんな、どうせ選ぶ羽目になるんだったらハイレベルなアルファを選べ」
イケメンに間近で力強く言われ、そこに居た全員が
「あ、そうよね」
と冷静な空気になる。
おっっまぇえ言い方ってもんがあるだろ、言い方!
ぐぬぬと歯ぎしりしながらも図星の為何も言い返せない俺は、畳みかけるようにイケメンアルファに
「ほら、お前からもしっかり断れ」
と言われ、不承不承ながらも皆に
「これは単に薬飲み忘れってやつだから、
と頭を下げた。その途端、熱かった周りの空気が少し収まり、かかっていた魔法が消えたかのように高校生達は「まあ、そうだよね、うん」と言いながら三々五々散らばって行った。た、助かった。
俺は彼らを見送るイケメンアルファの背中を見上げながら、すげぇ悔しいけど礼ぐらいは言わないと後で何を吹聴されるかわからんと思い、「おい」と彼に声をかける。もう体内が沸騰寸前ぐらい湯だっていて彼を見つめる視線も熱っぽくなっていたかもしれない。
振り向いたイケメンは俺の視線に気づくと、なぜだか急に挙動不審になった。目を泳がせ、何度か口を金魚のようにぱくぱくさせてから、漸くしぼり出すように
「ま、まあ・・・、きみなら、その・・・、いいけど」
と呟いた。
と同時に顔を背けた両耳が真っ赤になってて、ってツンデレか!!
ってかお前が一番フェロモンにあてられてるじゃないか!!
俺は「ごめんなさい!! 」とがばりと頭を下げて謝ると、返事は聞かないままその場を猛ダッシュで逃げ出した。早く家に帰らないともう身体が危険レベルで熱いし精神はぼろぼろだし色々と限界だったからだ。くそ熱い。いろんな意味でつらい。死ぬ。
ほうぼうの体でなんとか自宅に駆け込み、抑制剤をひとのみしてベッドに転がる。その後親や学校にはさんざん説教を食らったが、もう俺は十二分に懲りていたし実体験を以て分かりすぎるほど分かった。
抑制剤は二度と飲み忘れない。心身ともに与えられるダメージは相当だ。
展開は他の国と違えど、オメガバースはやっぱり悲惨だ、と。
爆笑オメバガース~スピンオフと言う名の笑劇を貴方に~ 浅野新 @a_rata
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