第14話
性欲絶頂期であるこいつら高校生は成人みたいに順番に並ぶなんて事はしない。俺は某ネズミ国の人気ネズミキャラクターばりにあっと言う間に高校生達に超絶至近距離で取り囲まれもみくちゃにされた。皆、俺のフェロモンにあてられ目を爛々とさせながらお互いにライバル心むきだしで相手を押しやり、俺の前に我先にと出てアピールをし始める。
「オ、オレ、知ってるよな。隣のクラスの川口、ベータ。俺そっち上手いからさ、絶対満足させてやれるし。どう? これから」
顔見知りの男子が爽やかな笑顔でドギツイ事を言っている。恐ろしい。これがフォース、いや違ったフェロモンの力。さすが10代、アピールが全くオブラート抜きで直球勝負だ・・・、って逆に引くわ。
今だ何か言いかけている川口とやらの前に小柄な男子が割り込んでくる。
「いっ、一年生、浜野って言います、オメガです」
ぺこりと頭を下げる動作も礼儀正しく、顔を真っ赤にして初々しい反応だな、と微笑ましく思った瞬間、彼は俺の顔の前に何かのチケットをバンと突きつけた。
「やっぱり学生たるもの清貧でないと! 僕、ラブホテルの割引券持ってますから。回数券ですし、大丈夫です、ね!? 」
ね、じゃねぇわ。良い笑顔をするな。回数券って何回ヤる気だよ。前言撤回、清貧って一体何なんだ、明らかに清らかさはゼロじゃねぇか。
二の句を告げない俺の前に、
「男子ってデリカシーがないわね、もう少しスマートに誘えないもんなの? ちょっとどいてくれない」
と背がすらりと高く、長い茶色がかった髪も綺麗な美人が現れた。
おお、いかにもアルファ。顔良しスタイル良し、自信が全身からオーラとなってあふれ出している。先輩である三年生女子だ、何かと目立つから知っている。彼女の方も初見だが俺の事はすでに知っているだろう。アルファは数が少ないからお互いの情報は校内で何かと耳に入るのだ。
美人先輩は俺の顔を一目見るなり、
「あれ、このフェロモンってきみだったの」
と明らかに失望した顔になり、
「アルファならやっぱり三高じゃないと。じゃ」
と踵を返してさっさと退場して行った。
どうせ大した事のないアルファだよこんのやろぉおぉ。
「あっ! あのっ! 」
がっかりする俺の前に飛び込んできたのは少し幼い感じのする女の子。下級生だろうか。
「一年、オメガ、佐々木です! あの、わたし、私と結婚して下さい!! 」
言いざまガバリと土下座され、俺と俺の周りが一瞬温度が下がった。
ぎぃやぁああー!!フェロモンにあてられすぎて理性を失っていらっしゃるー!!!
女子に土下座させる趣味なんてないよ、
「すみません、立って! 頼むから立って下さい! 」
懸命に彼女を立たせようとする俺の隣に、気配をさせずスッと一人の女子が立つ。
「ひぎぃいい!! 」
同じクラスの林だ。眼鏡をかけ、よく本を読んでいてクールでいつも冷静な女子と言う印象だが開口一番、
「・・・ベータだけど。結婚を前提にお付き合いから」
女子はさすがだよね、身体は大事にしないと。まずは結婚が先って真面目でいいと思うよ・・・って、結局品があるか否かの違いだけで冷静じゃないのは一緒だー!!!
頭も体も熱くてパンク寸前だ、頭が働かない、ぎゃー、どうしよう。
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