第三章 第九話 離脱
「真吾、大丈夫か?」
俺は真吾に問いかけたが、何も反応はない。
ただ下を俯いているだけだ。
亮夜は真吾の姿を見る。
「たかがカバンだろ?」
その言葉に「たかが?」と小さな声で反応した。
瞬間、真吾の手に刀が現れ、亮夜の
「今なんて言ったんだい? たかが? 君にとってはたかがカバンかもしれないけど。僕にとっては大切なものだったんだよ!」
真吾が大声で言ったが、亮夜は「だからなんだ?」と返し、続けるようにこう言った。
「斬れるもんなら斬れよ。意味ねぇのわかってんだろ?」
真吾の目つきが険しくなった瞬間、唐突に
神代が「あなた達やめなさい!」と叫ぶ。
しかし、ふたりの視線は変わらない。
見つ目合う二人。
その二人を仲裁するように彼女は二人の視界に入る。
亮夜の目を見てこう言った。
「まず水島くん、人によって大切なものや価値は違うの。あなたの自己中心的な考え方は変えなさい」
続いて振り向き真吾の目を見る。
「岩城くん、ここは抑えなさい。気持ちは分かるけど落ち着きなさい」
真吾は神代の目を見て「わかったよ」と刀を消す。
そして、彼は下を向き、とんでもない言葉を発した。
「僕は君たちと離れるよ」
離れる?
何を言っているんだ?
「真吾、離れるって?」
「言葉通りだよ。これからは個人で行動する」
俺が「なんで」と言おうとした瞬間、亮夜が「あぁ、行けよ。行っちまえ」と腕を組み、そっぽを向く。
「そうするよ……神代さん、あとは……」
「あなたを止める権利はないわ」
「ありがとう」
えっ? 本当に離れるのか?
仲間になったばっかりなのに?
「真吾、待ってよ。俺らから別れる必要はないだろ? ほら、亮夜あや……」
俺は亮夜に言ったが、彼は真吾を見ようとしない。
なんで謝らないんだ?
謝れば終わる話じゃないか。
「宏くん、君は彼らといた方がいいよ。大丈夫、夢から覚めたらまた会えるからね。それと……」
真吾は俺の肩を叩き、死んだ魚のような目で笑いながらこう言った。
「ひとりはもう慣れっこだよ」
彼は扉へ向かって行く。
俺はなにも言えない。
なんで止めないんだ。
なんで謝らないんだ。
なんで俺は……何もできないんだ。
そう考えていたら扉が閉まる音が聞こえた。
真吾は俺たちから離れたのだ。
少し沈黙の間があった。
誰も話そうとしない。
俺は「神代さん」と口にする。
「なに?」
「なんで止めなかったんだ?」
彼女は目を逸らし「彼が選んだことよ。たまたま利害が一致してただけ」と答えた。
「亮夜、なんで謝らなかったんだ?」
亮夜を見る。
俺を見つめている。
「俺は思ったことを言っただけだ」
なんて
俺は彼の態度に言葉が出なかった。
SPIRIT~スピリット~ SHOW @SHOW-G
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