決まり字何字、八番歌。
八番歌から万葉集へ。
八番歌の世界を広げるために、「決まり字」を手掛かりとして、『万葉集』に集録された他の歌との比較を試みてみました。
楽しんでいただけたら幸いです。
八番歌そのものから離れることで、妄想度が増してまいりました。
* * *
『万葉集』巻一に収録されている「八番歌」(=八番目の和歌)。
「
という「ご都合主義の
これを「文法第一主義」で以下のように読みたいと主張したのが以前のお話でした。
「
「
今回は「八番歌自身」という狭い世界から殻を破って、「他歌と八番歌」という比較の中で検証してみたいと思います。
では、問題です。
『万葉集』の全短歌四二〇〇余首を「百人一首」のように「競技かるた」にするならば、「八番歌」の「決まり字」は何字になるでしょうか?
ちなみに「競技かるた」の最長は「あさぼらけ」「きみがため」「わたのはら」といった「初句が同じ」の六字決まりです。
では、八番歌は? ――六文字より多いでしょうか、少ないでしょうか。
正解は――なんと、十三字!
十三字決まりなんです、八番歌は。
十三字決まりということは「初句から二句までが同じ」、具体的に八番歌で言うならば「
これって「偶然」なんでしょうか。
問題の一首は、作者未詳の巻十二・三二〇二番歌。
現行『万葉集』による万葉仮名ヴァージョンは以下の通り。
「柔田津尓 舟乗将為跡 聞之苗 如何毛君之 所見不来将有」
「
「柔田津に 舟乗りせむと 聞きしなへ 如何にも君が 見え来ず有るらむ」
これを品詞分解して文法的に解説するならば、
「
となります。
これを直訳すると、
「柔田津で船乗りするつもりだと(あなたから)聞いたとともに、どうしてあなたの姿が見えずにいるのだろうか」
というような訳になるかと思います。日本語としてはやや不自然ですが。
ポイントは、「過去の実体験」を表現する「直接過去の助動詞」である「き」の連体形「し」が使われていることと、「事柄の並行した存在や進行を表す接続助詞」である「なへ」が使われていること。
これを意訳したのが、
「
「『柔田津に船乗りせむ』という話を(あなたから手紙か使者か何かによって)直接聞かされていたから、その話の広がりと同時進行であなたの姿を目にすることになるはずが、どうしてそうなってはいないのだろうか」という気持ちを詠んだ歌だと解することができます。
ここで気になるのは、この歌の「詠み手」が待っていた「君」が誰なのか、ということです。
よく目にする解説は「柔田津=熟田津=斉明天皇による朝鮮半島への出兵の航路」なる理論から「出兵に参加させられた夫の帰りを待ちわびる妻が詠んだ歌である」というものなのですが。
「柔田津(=熟田津)に船乗りせむ」ですよ?
十二字かぶりですよ?
人為的に被せられた可能性ってものは万に一つもないんですか?
「自らの身を(哀傷歌(=挽歌=鎮魂歌))八番歌の世界に置いて、アンサーソング的に詠まれた歌」。
『日本書紀』説を採るなら「
『古事記』説を採るなら「
そういった解釈は全く成り立たないんでしょうか。
『日本書紀』説ヴァージョン。
「
「
「
「
『古事記』説ヴァージョン。
「
「
「
「
どちらのヴァージョンにせよ、素敵な
ニキタツ! 万葉八番歌を掘り下げろ。 ペリヱ @perriwer
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