3.
水屋箪笥の硝子戸のなかに、ひと粒の蛋白石がしまわれている。
いつの、だれのものか、ほんとの蛋白石かもわからない石ころは、けれども宝もの然として、ひみつ箱のなか、絣の端切れのうちから取り出される。
かたちはいびつな白花豆。むかしからの遊び道具らしく細かい傷がいくつもついている。
手のひらにころんとしてやると、ひかりの加減でうっすらと虹の遊色をうかべる。
またあるとき、ままごとのまじないに、皿のうえに転がされれば蛋白石は、たちまち砂糖菓子となる。ナイフを添えて牛酪にもなる。指でつまめばひとかたまりの塩になる。
いかにも、夢のあそびの、生きる糧なる宝ものである。
『あをと蛋白石』より(三つの草稿) きし あきら @hypast
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