第2話

ガタガタ…

車の後ろのトランクに乗っている水槽がガタガタ揺れている。


「海々ちゃん、もうすぐ着くからね」


運転をしながら海々(みみ)に話しかけてきたのは海々の遠い親戚のさちこおばさんだ。赤ちゃんの頃にあったことがあるようなのだが当然おぼえているはずがなく、ほぼ初対面のように接している。

あの土砂崩れの後、海々は施設に引き取られた。お母さんはどこを探しても会うことが出来ず、大人たちは土砂崩れに巻き込まれてしまったのではないかとかなんとか言っていた。

「海々ちゃん、大変だったでしょう?これからはおばさん達のこと家族だと思って過ごしてね」

さちこおばさんは運転しながら海々に話してきた。カーブミラー越しに顔を覗いてみるがまっすぐ前を向いたまま目が合うことは無い。

「はい。ありがとうございます。」

海々の固い受け答えにも一切嫌な顔せず、むしろ微笑んで聞いてくれるさちこおばさんは鈍いのか海々に興味が無いのか。

どちらにせよ、今の海々にはさちこおばさんの対応がありがたかった。


「そうだ海々ちゃん、うちのおじさん覚えてる?」


問題は他にもあったのだ。それは海和おじさんだ。海和おじさんとは3歳くらいの頃に会った。が、印象は最悪で海々はあまり好きではなかった。顔は怖いし、無口だし、なによりすぐ怒鳴るし、、なんでさちこおばさんは海和おじさんと結婚したのか全く理解できなかった。


「海々ちゃんが5歳くらいの頃にねうちのお父さん新しい仕事始めたのよ。見たらきっと驚くわよぉ」


海々が海和おじさんのことを嫌っているなど知る由もないさちこおばさんは海々にとって全く興味もない海和おじさんの話を続ける。

仕事を見たところでどうも思わないとは思うが、


「そうなんですか、」


とだけ返しておく。


それから30分程無言の時間が続きゆらゆらと車に揺られていた。


「海々ちゃん着いたわよ、ここが家で隣がお父さんの職場よ」


車から降りてみると赤い屋根のカントリー風の家が1軒。と、隣の海和おじさんの職場は


「海々水族館」


「お父さんね水族館始めたのよ」


さちこおばさんが誇らしげに言う。

しかし、海々は驚きでまったく声が出なかった。

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人生最大の悲劇=喜劇だったはなし @aaaaami

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