土埃
りう(こぶ)
土埃
その土地のよく潤っていたこと
二つの人々を隔てた川の恵
それをよく分け合っていた人々
それをよく分け合っていた人々が
ある夜を境に遠く隔てられた
子のすがる 母の首はなく
若い娘は肘より先を失って
しかし悪意はどこからどこへと
行くあてもなく
若人は土煙となって姿を消した
その土地のよく潤っていたこと
二つの人々を隔てた川の恵と
それをよく分け合っていたあの人
名は知らぬ あの人に
裂かれた私の子と夫
悪意をどう持とう 執念をどう
ただひたすらに逃げ惑い
川のこちらは もう何もない
川のあちらは 遠く烟りて
踊るマチェータ 夜な夜な響く
なんのために?
なんのために?
夜は眠れず 昼は食べるものもなしに
それでも私は 死ななかったのだ
なんのために?
なんのために?
太陽は登り 地に雨を注いだ
芽吹きは いずれ収穫されるために
水溜りが生命の表情をうつしとって
悪意が 溶けてしまう
土埃 りう(こぶ) @kobu1442
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