第23話
デートは男がエスコートするべきというのは古い考えだと思う。
世の中、男女平等うんたらかんたら言ってはいるが現在の社会はどちらかというと女性優位であり、男性の尊厳はほぼ無いに等しい。
いざ、エスコートすると、あそこ連れてくとか無いわーとか、話し面白くないとかそんな風なことを聞くことが多くあるのではないだろうか。
どこでもいいよ、と言いながら心ではマジあり得んしとか思われてたらエスコートする側もたまったものではない。どこでもよくねーじゃねーか!
逆に女性に任せきりになってしまうと男というのはプライドだかなんだかが刺激されて悔しく思ってしまうのも一つの事実なのはかわりない。男も女もめんどくせーな。
結局はお互いに話し合って場所を決めれば文句など生まれるはずがないのだ。それでも生まれるのなら、もうそいつとは別れるか、どっちかのデート中の行動が悪すぎただけだろう。
つまり、場所ではなく相手。あまりにも相手との相性が悪すぎるだけ。
もしくは、それを許容しあえるカップルが理想なのかしらん?知らんけども。
てか、論点がずれてるというか、論争変わってる気がする。えっと、最初はなんだっけ。男がデートのエスコートをするのは古いだっけ。なんかデートの場所とかの話しになったけど。
今の時代消極的な男性なんて多くいるし、グイグイ引っ張っていく女性もいる。だから、確実なこれというのはありはしないのだ。
何が言いたいのかったいうと。
「さて、レンくん。まずは服屋にいっくよー!」
「嫌だ嫌だ嫌だ!!連れてかないでッ!」
「トラウマでも刺激されたレベルの嫌がりかたね……」
行きたくもない服屋なんていうのに連れてかれそうになるのだからエスコートとか男が必ずしもやるわけではないたいうことなのね。
俺たちは、さまざまな店舗があるデパートに足を踏み入れどこに向かうか相談をしていた。けれど、話し合いはいっこうに決まらない。
「馬鹿野郎!お前らみたいな可愛い奴らが行く服屋なんて陽キャが行くようなところだろ!?俺に死ねって言ってるようなもんだぞ!!」
「スゴイ情けないこと言ってるの分かってる??」
「レンくん大胆だなぁ、可愛いなんて照れちゃうよ」
論点はそこじゃないんですがッ。
「服屋なんてめんどくさい店の上位にはいるとこだぞ。店員は話しかけてくるわ、グイグイ来るわでいいとこなんて一つもない」
「偏見すぎない?」
「でも、あたしとりーちゃんを着せ替えできて可愛い姿も拝めるならどっちかっていうとプラスだと思うよ」
ばっか、女子と行くとこでキツイランキングでもトップ近くを取り続けるのが服屋だぞ。そんなとこようもないのに行きたくないのであります。
「プラスとか関係ないだろ、お前らは何着ても可愛いんだから。そもそも俺は二度と女子と服屋には行かないって決めてるんだ、絶対に」
とかいいつつ、何だかんだで漣さんちの人たちに付き合わされてるし、なんなら早瀬妹にも連れてかれる。そのたび大変な目にあっているんだから近寄りたくない。俺の意見を無視するのほんとよくない。
「こ、この人は大声で……ッ!」
「何だろう今までも言われたことあるけど、レンくんのは事実を単に口に出してるから下心を感じないのかな?」
「頼むよ……もう俺は三時間耐久誉めちぎり選択とかやりたくないんだよ……辛いんだよ」
感想を聞くのはいいけど、毎度違う言葉で誉めろって無茶振りが激しすぎる。語彙力弱者の俺には大変なんですぞ。
「なのに、買いたい方はもう決まっているのにどっちかを選ばせてくるとかおかしいでしょ。決めてんなら聞かずに買えばええやん」
「デリカシーの欠如と女心分かってない」
「ちっちっちレンくんダメだよーそういうのはちゃんと考えて選んであげないと」
分からねぇ。なんなの、女心って。
誰か女心の研究をして解説書を出してくれ。男性から馬鹿売れ間違いなし。女心で目指すミリオンセラー!!
歴史に名を残す偉人となるにちがいない。俺が保証するぜ。
「それに加えて俺はどこからどうみても陰キャだろ」
「前髪を切りましょう」
「ついでにダサいメガネも捨てよう?」
「俺の防具全否定かよ」
防具っていうか予防なんすけど、これ。
「別に他人から俺がどう見られような興味もないしどうでもいいが、俺を連れてるお前らが難癖つけられたらめんどくさいだろ」
俺自身、何言われようが気にしない。所詮他人からの戯れ言。そんなのにいちいち反応してたら疲れるだけだ。
だが、こいつらが俺と同じとは限らない。その見えない体力ゲージを削られる可能性があって少しでも傷つくのは許容するのは難しい。
「……どうでもいいはずだっだんだがなぁ」
「何か言った?」
「分かった!」
ほんと、こいつ唐突だな。脈絡って言葉知ってる?
「今日はその前髪とメガネを外して行こう!」
「ねぇ、話し聞いてた?メガネとか外したらちょっとあれな目付きが晒されちゃって子供泣いちゃうんだよ?」
「じゃじゃーん!こんな時のために早瀬くんから預かってたレンくんが自宅で使ってる髪留めです!」
「おい、何してくれてんのあいつ」
ナチュラルに窃盗して流通させるとかやることサイコすぎませんか。本人の許可を得てからやれや。
「にゅふふ、よく考えてよレンくん」
「俺がよく考えてないみたいな言い方やめろ」
「さっきあたしとりーちゃんはナンパされました」
「まあ、お前らはとち狂った奴じゃなきゃ可愛いから理解できるな」
「そうなのよね、ちーちゃんと出掛けたら毎回声かけられてうんざりする。もげればいいのに」
急に怖いこと言うのやめてくれません。男の脳みそが下半身と直結してるからって根本を亡きものにしようとするのよくないからね。
隣からの呟きに戦慄していると、俺の前で立ち止まり説き伏せようとしてくる菅原千春に目線を戻す。
「だけど、今回はレンくんがいます。つまり?」
「俺は防波堤にならないと思いますが」
「それは前髪をおろしてるからだね。けど」
そう言って、菅原はちょっと背伸びして俺の前髪をあげる。
「うんしょ、っと。目付きがすんごい悪いからそこいにいるだけで男避けになるのです!」
「ねぇ、りーちゃん。こいつ殴っていい?」
「ひゃぁ!?急にりーちゃんって呼ぶのやめてくれない!?」
ちょっとしたジョークだから許してくれ。
人の身体的特徴を悪く言うのはよくねーですぞ。
しかし、十人中九人がびびる俺の目付きなら男避けになるのは論理的で納得できる。あくまで理論としてはだが。感情としては怒りたいです。
分かった、わかったよやればいいんだろ。
観念した俺に菅原は笑顔で髪留めを渡してくる。それを受け取り慣れた手付きで前髪をあげ、掛けていたメガネを取り鞄にしまう。
あまり、外でしたくない格好だがしゃーなし。
「よーし、じゃあ服屋でレンくんの好みの服をさがそっ。ね、りーちゃん?」
「べ、別に私はわざわざこの人の好みなんてごにょごにょ……」
「まずはあそこから行こー」
菅原が俺と綾瀬の手を掴み近くにあった服屋に向かう。
結局、服屋に行くのは変わらないんですね……。
入ってからは俺は彼女たちの後ろをカルガモのようについていく。その間、俺は余計なことを喋らないようにいろんなとこに目を向けていた。
ちなみに、彼女たちに近づいてこようとした男どもは俺を見るなりそそくさと退散していった。やんのかこら。
彼女たちは二人であーだこーだ言いながら楽しそうに服を選んでいる。楽しそうでなにより。
「レンくんはやっぱりミニスカートが好き?」
「何がやっぱりでミニスカートなのか意味分からないけど、活発そうな菅原に似合ってるとは思う」
「……」
「……」
「ん?なんだよ」
なになに、どうしてそんな奇妙なものを見るような目で見てくるの?
「いや、何かマトモな答えがきてびっくりしちゃった」
「さっきも言ったが付き合わされることが多いからな。意見も言えないと袋叩きにされるんだ」
「英才教育かしら……?」
こんな程度が英才教育なら普通の勉強も英才教育と言えるな。皆がダメになればダメな奴はいなくなるみたいな感じで、皆が英才教育受ければ立派になるみたいな。全然ちげーわ。
「こ、これは思ったより強敵が多い予感だよりーちゃん……!」
「よ、よく分かんないけどそんな気がするわ……!」
ふと、周りから視線を感じたため見渡してみるがそれらしきものは見つからない。なんだ、知り合いでもいたか?
店の外の見えない部分で何かを落とす音が聞こえたが、関係ないだろう。
はて、何故か寒気がしたが……。
「レンくーん、次の店行くよー」
「まだ行くのぉ?」
「嫌そうな声出さないの」
自然と綾瀬が俺の手を握り連れていかれる。それに便乗するように菅原ももう片方の手を握って嬉しそうに歩く。
まあ、なんだ。手を握られて嬉しそうに歩かれるとこちらとしても嬉しくなるのだから不思議なものだ。
身内じゃないはずなのに、相手が嬉しいと自分も嬉しくなる。
そんな風に今日のデートは悪くない気がした。
でも、見てる人はちゃんと彼女と二人きりて行くんだぞ。普通ならめっちゃギスギスするからねこの状況。いい、わかった?
「どうしよう蓮」
「俺はまだ続くデートに思いを馳せなきゃ行けないから余裕はないぞ」
「さっきからスマホの通知音が止まらない……」
「変な女に引っ掛かったんじゃねーの?」
「妹様から恐ろしい速度でメッセージがずっときてるんだ」
「仲いいなぁ早瀬は妹と」
「なぁ、お前ら見つかってないよな!?」
「なんの話しだ?」
「『じじょうきく、うごくな』った来てるんだけど!?」
「……がんばれ」
「察してるよなぁ!?おい、蓮!?待って行かないで助けて!!」
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