普通にあるラーメン
「虫たちは光の下に集まってきます。けれども、私たちはそうではありません。自由研究は金を生むでしょうか。そうです。私たちに必要なもの、それは金の他にありません。安らかなものはすべて、夢も、希望も、金の下に集まってきます。テレビも人も車も、すべては金によって動きます。金にまみれ、金にひれ伏し、金に焦がれて踊るのです。私たちの汗も涙も金集めの道具に過ぎません。今まさに私たちの頭の中は金で埋め尽くされました。だけど、まだ足りません。もっともっと持ってきてください。一人一人が金の運び手となって、この国の中心に金を集中させてください。ブレーキは昭和の時代に壊れました。だから皆さんで一斉にアクセルを強く踏みましょう。潤わなければ何も始まりません。私たちは未来のために、命をかけて金を取りにいきます」
「はい、ラーメンお待たせ」
「どうも」
ここのラーメンはこれと言って特長があるとは思えない。だけど、私は気がつくとよくこの場所に来ている。客はだいたい私を含めて2人か3人くらいのことが多い。何か落ち着く場所だ。私はこのテーブルが好きなのかもしれない。首の苦しげな扇風機がずっと回っている。スープを一口いただく。何か懐かしい味だ。ずっと昔に、どこかの商店街で口にした気がする。画面はそんなに美しくない。きっとブラウン管だ。
「続いてお天気情報です」
できればなくならないでいてほしい。
私は普通でいいと思う。そんなに長居するわけではないけれど。大将、どうか無理はしないで。
・
金のない暮らしの向こう祭典に群がる夏のゴールド・ラッシュ
【SS&短歌】短い話、短い歌 ロボモフ @robomofu
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