アジフライラブ

 いくら待っても私の料理は運ばれてこない。

「あの、まだでしょうか」

「お待ちください。順番にやってますんで」


チャカチャンチャンチャン♪


 待っても待っても運ばれてこないのだ。

「あのー……」

「もう少々お待ちください」

「どれくらいになりそうですか?」

「お待ちください。順々に……」


チャカチャンチャンチャン♪


 いったいいつまで待てばいいのだ。

「すみませーん! すみませーん!」

「お待たせしました。何しましょう?」

「いや、そうじゃなくて……」

「いえ、それが、お客様の注文は通ってないようです」

「はい?」


「ご注文は、何しましょう?」

「いやいやずっと待ってるんですよ。待てと言うからずーっと待ってたんじゃないですか。注文してるでしょ」

「通ってないんですね」

「待てと言うから待ってましたけど」

「ですから注文せずに待たれても無理ですので」

「だから、注文はしてるでしょう。1時間も待ちましたよ」


チャカチャンチャンチャン♪


「通ってないようです」

「だから……」

「で、何しましょう?」

「その前に何か言うことはないんですか」

「注文をしていただかないと始まりませんので」

「だから、注文は最初にしてますよね」

「だから、それが通ってないようなんで、ご注文は何しましょう?」

「だから、何で通ってないんだって……」

「だから、改めてご注文は何しましょうか?」

「だから、改める前に何かないのかよって」


「ご注文を繰り返します。ご注文は何しましょう?」

「アジフライ定食」

「かしこまりました。お待ちください」


チャカチャンチャンチャン♪


「すみませんお客様。アジフライ売り切れました」

「もうええわ」



逢いたいの字体が乱れふしだらに

裸体に添っていたいパッション


(折句「アジフライ」短歌)

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