中二病のまとめ 3
そのページには、しゃがんで祈っている姿の『しゃがむ土偶』の写真が掲載されていた。その表情は、アニメキャラのように愛らしく、艶のある曲線と造形美が感じられた。
「――何千年間もの悠久の時を、何を祈り続けているのだろうか?」
僕は瞼を落とし考察した。もしかしたら、うら若き男女の恋の豊饒を、ずっと祈り続けているのではないか? そんな幻想を掻き立てさせるほど、形容しがたい魅惑さを放っている気がした。
そして、その悠久の時を超えた祈りが、――僕の内に秘められていた何かを、満月の夜の満ち潮のさざ波のように、ゆっくりと浸食し溶かし始めていた。
僕は右斜め前の彼女を見て、ある事に気づいてしまった。それは一瞬、心臓を握りしめたれたような、信じられない驚きだった。なんと彼女の机の左側に掛けられている、カバンのチャックに付けられているキーホルダーが『しゃがむ土偶』だったのだ。僕はそれを暫くの間、凝視してしまった。――彼女の口元が微笑しているように見えた。
「その『しゃがむ土偶』のキーホルダー、どこで入手したの?」と休み時間に、彼女に訊こうと誓った。得体の知れない力に、僕の心は引き寄せられていた。
自分自身の内に秘められていた何かが、微細に変化していることに、――その時の僕はまだ自覚できずにいた。
2限目の授業中、その小さな『しゃがむ土偶』に、じっと見られている気がした。
おわり
クラスの好きな女子が、中二病の件について 山本夢子 @yumeko_000
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