そして彼女らは小説を読む

のんこ

『そして彼女は』×『本好き少女の恋愛事情』

 俺はいつも通り文芸部の部室で1人本を読んでいた。あれ? おかしいな文芸部員は俺以外にもいるはずなのだが、なぜ誰もこないのだろうか……

「おーい! 智樹君! 聞いてくれ!」

 突然ドアが開いたと思えばそこに立っているのは小百合先輩だった。今日もツインテールが美しい。

「どうしたんですか? ここは水泳部ではないですよ?」

「そんなことは知っている。私は水泳部員でもありながら、文芸部員でもあるんだぞ」

 そういえば小百合さんは文芸部員だった。来たのを見たことないから忘れていた。

「あ、そういえばそうでした。ごめんなさい。で、今日は何か用ですか?」

 小百合さんが何かあると俺のところにすぐに俺のところに来る。水泳部の練習で忙しいはずなのに大丈夫なのだろうか?

「あぁ、面白い小説を見つけたんだ!」

「へー。小百合さんも本読むんですね。」

「当たり前だろ! これでも文芸部員だぞ!」

 いつも水泳の練習をしているイメージがあるから少し意外である。

「で、どんな小説何ですか?」

「ふむ。たまたまカクヨムという小説投稿サイトで見つけたんだが、『本好き少女の恋愛事情』っていう小説らしい」

 小百合先輩は自分のスマホ画面を見せてくる。えーと、作者は薄紅 サクラさんか。俺は近くにあった紙にメモをしとく。帰ったら調べてみよう。

「それで、どんな小説何ですか?」

「簡単に言うと、本好きの少女がある男子と契約上の恋人になることによって、いろいろなトラブルが起きる話だな」

「トラブルですか?」

「そう。他の女子の恨みを買ったり、過去のいじめが再発したり……。それがすっごく生生しく書かれていて、読むのも辛くなったな。私が今すぐにでも助けたい! と何度思ったことか……」

「そんなに辛い話なんですか……。俺はそういうの苦手なんですけど……」

「待て待て待て待て! 別にやられっぱなしではないぞ! 少女には雪乃っていう親友がいるんだけどな、その子がいろいろサポートしてくれるんだ!」

「なるほど。その子と一緒に乗り越えていくんですね」

「ああ、雪乃は優しくて、強くて、友達思いなんだ!……ん? これって私と一緒じゃないか!」

 先輩は「キャラがかぶってる!」と言い、頭を抱えている。そんなに気にしなくても……。

「へー。先輩みたいな親友がいたら心強いですね」

「ま、まぁ、私の方が堂々としていて積極的だけどな!」

「小百合先輩は堂々としすぎですよ」

「そ、そうなのか! 智樹君はこういうの苦手なのか…?」

「別に苦手というわけではないけど…ちょっと大胆というか……」

「なるほど、そういう見方もあるのか…、雪乃を見習ってみるのもいいかもな…」

 真剣に考えこむ小百合先輩。そんなに雪乃っていい人なのか…。


「あ、それとだな。小説のページを見て驚かないように」

「え、それはどういう……」

「いや、私も最初は驚いたのだがな、話数が200話近くもあるんだ!」

「に、200話!?」

「だが! 心配しなくていい! 1話ごとの文字数が少なく、テンポよく読めるんだ! 私も最初は多いなと感じたが、いざ読んでみると小説の世界に引き込まれ、気が付くと100話を超えていた! そしてなかなかやめられない……。あれは中毒性があるな……」

 なんかそこまで褒めると胡散臭いな。しかし、小百合先輩はめったに嘘をつかない純粋な人だ。本当にその小説が好きだからこそ、そこまで語るのだろう。

 俺はブックマークに『本好き少女の恋愛事情』を追加し、帰って読むことにした。


 本好き少女の恋愛事情(薄紅 サクラ)

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884926626


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