この問に解答はあるのか?

シェング

第1話 知る由もないこと。

理不尽だ。そう思いながらパソコンについたLINEの文字に目を配る。


試される北の大地に居る俺は本州の事などわかりはしない。


人は自分のわかってる範囲のことしかわからない。それは当然の理だ。



なのに、なぜだ。なぜ、今俺は責められているのか。



本州のある地域ではかなりの降雨があったらしい。災害対策本部で言えば、レベル5あるうちでの、レベル4だという。


だが、そんなもの外界の情報をシャットアウトしていて、情報を見る機会がなければ知る由もない。


知る由もないはずなのはわかっているのだと思うのだが、何故か文面では俺を責め立ててくる。



「あなた以外は皆心配のLINEを送ってくれたんだけど」


このLINEを見た瞬間に吐き気が喉にせせり上がってくる。


俺が何を悪いことをしたという。その情報を知っていて当然と言わんばかりで、俺が知らないことを非難している文面。



知らないことは知らない。ツイッターで上がってきた情報でも、皆が騒いでいるわけでもない。


騒いでいたのかも知れないが、俺の目には映っていない。結局の所、自分に被害がなければわかるわけがない。



俺だって、その後すぐに安否の確認を行った。雷が落ちれば危険なこともわかっている。


知らないでいてLINEを送らなければ怠惰と思われても仕方あるまい。


だが、知らないことをどうやって知れというのだ。



常にブラウザに天気予報でもあげておけと?


常にテレビをつけっぱなしにしておけと?



まるで意味がわからない。ナンセンスだ。


挙句の果てには世間をツイッター以外でも知ったほうが良いよと言い放つ。



文章にすることによって、外に吐き出しているのが現状。


嘔吐の代わりに文章を吐き出している悲しい事実。


俺は精神的に弱い。この文面を見て吐きそうになるくらいにだ。



その言葉はどれだけ俺を傷つけるのか。LINEの通知音が怖くなる。



動画やアニメ、もしくは他のことをしていればそれ以外の情報なんて入ってくるわけないじゃないか。


それだけ、集中しているのに。


意味がわからないし、問いかけたさ。俺責められてるの?って。


そうしたら謝られた。ごめんねと。そして、邪魔しないようにするよと。



その余計に着飾られた大きな一言が尚も俺を傷つける。


そこから読み取れる感情は、間違いなく『話した私が馬鹿だった』という嘲笑を含んでいるものだからだ。


もしくは、無駄な時間をとってしまったという後悔。


切ない。


やりきれない気持ちの一つや二つは常に抱えている。


今、日本は世界バスケで戦っている。八村塁の事を話しても誰それ? レベルだろう。



でも、それで俺は馬鹿にしたことはない。だって知っていることは知っているし、知らないことは知らないのだから。


どうして、余計な一言を付け加えるのか。自分の正当性を認めさせたいのか。それとも、俺をいじめるためだけの一言か。




これが俺にはわからない。だから気持ちのすれ違いは起きるのだろう。


芳しくないことに、これで少し距離を取ると、どうして連絡してこないの? と怒られる。


そんなこと言われても困る。責められた方から話しかけるなんて、よほど勇気がないと出来ないことということを知ってほしい。



ただ、あなたはそれを知る由もないだろう。だって、知る機会がないのだから。

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