02 僕の当たり前
その日僕は休み時間の度に冬花さんに何回も話しかけようとしたが、あまり女性に話しかける経験が無かったのもあって、結局話しかけることはできなかった。
次の日の朝、僕はいつも通り朝早くの電車に乗っていた。
満員電車の中でどうやって冬花さんに話しかけようかなぁ、とウンウン悩んでいた時、目の前の同じ帝国学園の制服を着ている女の子の後ろ姿が見えた。
その制服を見て昨日の冬花さん可愛かったなぁ、なんて真っ黄色な事を考えていた時、事件は起きた。
後ろに居た成人男性が女の子の尻を他の乗客から見えないように触っているのである。
女の子は怖がっているのか、肩をフルフル震わせていた。しかし、本当に怖かったのか声は出せずにいて、周りに助けを求められないでいた。
無意識に体が動いた。
「おい、何やってんだよ!!!」
自分でも信じられない声が突然出た。
そして犯人の手を洗濯物のように捻る。捻る。捻る。
しかし、逆高した犯人は成人男性だったのでその痛みに耐え、もう1つの腕で殴られて、後ろに吹き飛ばされた。
「痛いなぁ。」
そう思って前を見た時はなんと事件は既に解決していた。犯人の更に隣にいた若い男性が犯人を取り押さえていたのである。
結局、犯人は逮捕され、そして僕はその場に急行してきた先生の「暴力は暴力。」という言葉によって反省文を作文用紙1枚その場で書かされその場は終わった。
先生は「学校に報告があるから。」、と先に行き、残された僕は「はぁ。柄でもないことなんかしなきゃよかったなぁ。そうしたら反省文なんて書かずに済んだのに。せめてあそこで取り押さえていたら反省文を書く価値はあるが、そこで負けるのが僕なんだよなぁ。」と自嘲も混ぜて独り言を呟いた時、ひんやりとした感触が僕の手に突然できた。
振り返るとそこにはまたあの時一度だけ見た貴女が僕の手を寒さで冷えた手で握っていた。
「さっきは助けてくれて本当にありがとうございます。」
「えっ!さっきの女の子って冬花さんだったんですね。後ろ姿だからわかりませんでした。自分は殴り飛ばされてしまったので、助けられて良かった、とは言えないけど無事で良かったです。」
「斎藤くんが見つけてくれなかったら、誰もわからなかったと思います。本当に助けてくれてありがとうございます。」
「女の子が困っていたら助けに行くのは僕の中では当たり前だからね。気にしないで。」
ちょうどその言葉を言った時に学校に着いたので冬花さんとはそこで別れた。
ふゆは白い。そして赤い 我羅 啓介 @s1310170094
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