地球防衛軍グリゴロスVS異世界攻略軍ヤエザキ(戦況地図リンクあり)
仮想世界。西暦2019年10月18日。12時00分。日本国、秋葉原。
オタクの街、秋葉原。今泉速人(いまいずみはやと)のプレイヤーのゲームの拠点。
テレビの向こう側から日常的とは思えないニュースが飛び込んでくるが、速人はその内容をあまり頭に入れなかった。否、入ることを拒んだ。
テレビのスイッチを切った後。速人は自室に入り、突然現れた魔法のようなステータス画面と。にらめっこする。初めから、今泉速人(いまいずみはやと)/グリゴロス。は【素早さ】以外のスキルは眼中に無かった。ステータス画面をポップアップさせた速人は、『身体加速レベル1』の次に3つのスキルツリーが出来ていることに気づく。そこには。『思考加速レベル1』『他者加速レベル1』『環境加速レベル1』と書かれていた。そしてどうやら、あと1つスキルを追加出来る。スキルポイントが残っているようだった。身体加速は解る。自分の【素早さ】が時速何キロとかでどんどん上がっていくんだろうということは解る。
「……」
新しく出来た『思考加速』『他者加速』『環境加速』の説明欄を読む。
『思考加速』……自身の思考が加速する、考える時間が増えると言っても過言ではない。
『他者加速』……自分以外の他者の素早さを加速させる事ができる。
『環境加速』……陸海空・宇宙や真空など、環境の変化状態でも加速する事が出来る。
「ん~……。この3つの中で1つだけスキルを覚えられるってことか……」
学生なので、勉強などで考える時間が増えるのは良いことだ。『思考加速』はすぐに使える。
そして、冒険者仲間が今は居ないので。『他者加速』は宝の持ち腐れになってしまう。
最後に『環境加速』は考えれば考えるほどに上級者向けな気がする……。
幸いなのか、不幸なのか解らないが。今は独りだ。ならば、真っ先に恩恵が受けられそうな『思考加速』を選択しよう。というわけで、2つ目の【素早さ】スキルをゲットした。
今泉速人(いまいずみはやと)/グリゴロス
『身体加速レベル1』……馬並みの速さ、時速60kmで動ける。
『思考加速レベル1』……1秒間で1分、思考する時間が与えられる。
「よし、スキルのほうはこれでいい。次はこの大都市東京を外で冒険している、冒険仲間を探してみよう」
まだ現実とファンタジーの区別がつかない少年は、今のこの状況を野次馬のように楽しむことにした。ポ〇モンGOをやりに行くように、軽い気持ちで外出した。
現実世界。西暦2034年10月18日。16時00分。日本国、東京。
仮想世界。西暦2019年10月18日。16時00分。日本国、秋葉原。
「あ! 試し斬りに丁度いい敵発見!」
天上院咲/ヤエザキは、相手のポップアップ画面が紅色なのを目にし。敵だと視認する。
紅色は『地球防衛軍』、白色は『異世界攻略軍』のメニューアイコンが表示されるので。その色で大きく解るのだ。服装や肌の色や旗印ではない。ゲームのアイコンなので一度決めたら変更はできない。勿論、現実性(リアリティ)を鑑み。裏切り行為も容認されているため。変更は可能だが多少のペナルティが加算される。
ヤエザキは初めから白色、『異世界攻略軍』だ。ついでに言うと、天上院姫/農林水サンも白色である。独断先行して敵陣営の奥の奥の方まで深く突き進んでしまった。誰かが叫ぶ。
「誰か! 奴を止めろー!」
〈PVP戦が開始されます。地球防衛軍グリゴリスVS異世界攻略軍ヤエザキ。周辺に居るプレイヤーは戦闘に巻き込まれないようにしてください〉
両者とも相手の手口が解らない全くの初見。互いに身構えて戦闘に入る。3・2・1……。
「何だかよく解らんが、敵なら問題ないな」
〈PVP戦スタート!〉
素早さが速いのはやはりグリゴリス。馬並みの速さ、時速60kmで駆ける。真正面から殴りかかろうとしたその時。ヤエザキはエンドコンテンツの武器……と言ってもレベルは初期状態で初心者が使う武器と大差ないが……。
ギュルン! 長剣【千物語・アナザー2009】、短剣【千物語・オリジン2018】が円陣を描きながら回転して襲ってきた。外回りにアナザー、内回りにオリジンの二段構えが。隙は無いとばかりにヤエザキの眼光は凛と煌めいていた。
グリゴロスは【何かやばい】とカンで察知し。怨とも念とも呼べぬ【ソレ】を大外回りに迂回する。【何かを見誤っている】とそう戦闘カンが冴えわたっている。その威圧感、戦闘と場数を潜り抜けてきたであろう。実質の鍛錬の数。
それよりも、戦闘カンが鋭く鍛錬されていたヤエザキは「これじゃあ勝負にならないね」と、2・3撃。剣を振り回して実感した。長剣【千物語・アナザー2009】、短剣【千物語・オリジン2018】を東京の地面にブッ刺し。あと3つの装備で迎え撃つことに決める。
魔服【千物語・ジンジャ2002】、兎靴【千物語・ミチビキ2034】、頭帯【千物語・ムゲン1987】。
「君と同じ素手だよ。私素手は素人だからさ、お手柔らかに頼むね」
と、ウインク混じりにグリゴロスに帰すヤエザキは。お茶らけていた。調子に乗らせてしまっていると思ったので。グリゴロスは最初の手始めに。馬並みの速さで、電光石火。右腕でぶん殴り。ヤエザキの魔服【千物語・ジンジャ2002】にぶつかり、物凄い衝撃波が空間をビリビリと振動させた。
現実世界。西暦2034年10月18日16時00分
仮想世界。西暦2019年5月18日16時00分。秋葉原。
《『ファンタジアリアリティ・オンライン』スタートします!》
突然、地球の御茶ノ水付近に上空、1000メートルに半径500メートルの二つの巨大な【穴】が開いた。一つは日本で、もう一つは反対側のブラジル。その【空の穴】は異世界『アンノーン』へ通じる道だった。
最初の1手目と同時に、滝のように。その場に雪崩れこむ両陣営プレイヤー。
地球から見て、異世界の侵入者はこの場所。東京での開戦の合図。
このゲームの開戦の合図となった。
「何だこいつ? ゲーム初心者かと思ったら全然違う。完全にVRゲームに慣れてやがる!」
相手の武器による性能ではない。動きが右往左往しているグリゴロスとかけ離れているのだ。
攻撃してもいなし、崩し。まるでグリゴロスを品定めしているように、余裕のある動作をしてくるのだ。その歪曲じみた曲芸に攻撃をワザと誘われているような気さえしてくる。
素早さで圧倒しても連打連打連打! の暴風雨のような多段連撃を全て受け止めていなす。
そう、鍛錬の違い。明確な鍛錬の差がはっきり拳と拳を合わせて理解できた。
(こいつ! ……強さが並みじゃない!?)
流石にこのヤエザキというプレイヤーと、独りで戦うのには荷が重すぎる。というか瞬殺されてしまう! と直感したグリゴロスは後方へ下がる。ゲーム的に言えば、いきなり野生のラスボスに当たってしまったような絶望感だった。……ゲームだけど。
「ありゃ。もう終わり? もっと遊ぼうよ~」
「あいにくこっちは完全な初心者なんだよ。撤退させてもらう……!」
「え~。 ……!?」
と、油断した瞬間。紅組、地球防衛軍から催涙弾が発射された。
「チャンス!」
「うわっちゃ!」
モブ兵隊達が前へ出てくる。
「地球防衛軍の力を甘く見るんじゃねえ―! 全軍突撃―!」
『うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
両軍の強い弱い関係なく、編隊を組んで陣取り合戦が始まった。
飛行能力を持つものは空を飛び。敵陣地、異世界攻略軍と空中戦を開始し。
地上では空から降ってきた、異世界攻略軍を秋葉原で迎え撃つ地球防衛軍。
……とうぶんは秋葉原が激戦区になりそうな勢いだった。秋葉原という陣地をどっちが取るか取られるか。巨大な【空の穴】は。異世界へのゲートはまだ遠くに感じた。ちなみに【空の穴】は御茶ノ水、上空に展開されてるようだった。
「あそこは、御茶ノ水あたりか……」
今泉速人/グリゴロスは、秋葉原駅を離れ近くの公園まで撤退した。理由は単純、もっとレベル上げしないと前線で戦えない。だった。
戦況地図(https://www.pixiv.net/artworks/77245349)
ドラゴン・スピード~VRMMOで【素早さ】に極振りしてみた~ ゆめみじ18 @hanadanngo
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