プロローグ2 天上院姫 天上院咲

 プロローグ2 天上院姫 天上院咲


「で。ステータス、装備品、スキルとその他もろもろの詳細データを教えてください」

「それ……うやむやにしちゃダメ?」

「駄目です。私が新作ゲームに参戦出来ません、ここは省略していい場面じゃないと考える」

「あ、はい……」

 缶コーヒーで喉を潤しながら。天上院姉妹はゲームシステムを詰める第2ラウンドに入った。

 そんなこんなで、まずは論より証拠。一回ログインしてチュートリアル部屋で色々シュミレーションしようという話になった。二人は同時にゲームの中へとダイブする。

『リンクスタート!』



 仮想世界【世界樹バンク:ヤエザキの部屋、1号室『ホーム』】

 ここには、以前。天上院咲、ネット名ヤエザキが冒険した品々とスキルが保存されている。全てのデータはオブジェクト化され。実際に使用することはできない。ただの装飾品として観て触れるものとして置かれるだけだ。

 ちゃっかりヤエザキの場合。EMO約360時間、クリスタルウォーズ、略称CWを約200時間プレイしているので。今回そこで手に入れたアイテムがオブジェクトされる形となる。

 目的が保存場所としての運用なので。データは、プレイしたゲームのまま存在できる。ただ、【遊ぶ事が出来ない】というのが最大の特徴であろう。まさに【観賞用】なのである。

「ヤエザキって、結構プレイしてたから沢山アイテムあるよな。それを今ここで確認すると」

「そのための確認作業でしょプレイヤーネーム農林水サン。あ、あと関係ないけど、この空間。窓が欲しい」

「んなもん好きにカスタマイズしろよ。そこまで面倒はみきれない」

「んじゃ、だすよ。どばっと」

「へい」



 仮想世界【世界樹バンク:ヤエザキの部屋、2号室『データ保存場所』】

【職業】魔法剣士レベル15。

【サブ職業】モンスター研究家。

【心のエレメンタル】最終決戦。

【称号】最吉最善の幸運者、モンスターを調べる者、最終決戦おひとよし、まっしろなみちにひかりさすもの、セミプロ。

【武器】短剣『ジーラダガーオーディリー【深い闇】』、長杖『トリックメーカー【改+3】』、眼鏡『万華鏡転生レンズ【改+3】』、靴『真新しいスニーカー【改+3】』、長剣『日本刀型の神器【真(シン)≠幻(ゲン)】』

【アイテム】なし。

【スキル】防音クリアボディ、ハイ・ジャンプ、雷速鼠動(らいそくちゅんどう)、超反応(ちょうはんのう)、古今無双(ここんむそう)、斬空剣(ざんくうけん)、スーパーガード、召喚/妖精フレイム・焔(ほむら)、浄土炎爆斬(じょうどえんばくざん)、ヒートガード、エボリューション、エボリューション・瞬、エボリューション・極、合唱アルティメット・プリンセス、

太陽・大回転、超天元突破 巨神殺し、森羅万象の円舞(しんらばんしょうのわるつ)、テラ・ファイアバード。

【システム外スキル】念波:掌波、念波:キャンセル、念波:吸着、半運命感知(ハーフリーディングシュタイナー)。

【乗り物】飛空艇・空母エヴァンジェリン。


 天上院姫、プレイヤーネーム農林水サンは、ん?。と首を傾げた。ヤエザキの武器が多いのではない【足らない】からだ。

「これ。あのちっこいショタっ子。ナナナ・カルメルにあげた武器が入って無いな?」

「完全にアレらの武器はあげたのよ。ちょっと未練はあるけど。悔いはない」

「惜しいのう。長剣『ネオライト・フェザーソード』とか、鏡盾『軽量版オールド・ミラーシールド』とか、翼靴『リセットジェットブーツ』とか。今思うと結構レアな武器だった気がするが。……使い勝手とか」

「そんな『あの時ああしてれば良かった論』はもう沢山よ。私は効率とか最適解には興味はない。だからエンジョイプレイなんじゃない」

 横から「お主らしいな」とボソッと呟き声が聞こえた気がしたが。気にしなかったことにするヤエザキ。

 だが、ギルドパーティだろうが。死守しておかねばならないものは、しっかり死守していた。そう。【飛空艇・空母エヴァンジェリン】である。それをオブジェクト化してポップアップした瞬間。【世界樹バンク:ヤエザキの部屋】がいきなりドでかい部屋へとサイズが変化した。縦にも長くなったが横にももっとドでかくなった。

「エンペラー君には【機動戦機ノア2号】で、カルメル君には【機動戦機ノア3号】だっけ?」

「まあ、そうなる。あっちはあっちで何とかやるだろう。まずはこっちだ」

 そう、広がりそうになった。話の縮小を要求する農林水サン。


「ああ、そうだ。それから今更で遅いけど『エレメンタルマスターオンライン、クリアおめでとう』これは成功報酬だ」

 そう言って。農林水サンは【社長権限】で、まるで表彰状でも渡すかのように。そのオブジェクトアイテムを手渡す。

《長剣【千物語・アナザー2009】、短剣【千物語・オリジン2018】、魔服【千物語・ジンジャ2002】、兎靴【千物語・ミチビキ2034】、頭帯【千物語・ムゲン1987】を手に入れました》

 農林水サンは念のため武器の説明をしておく。

「詳細は言わないが、意味は解るだろ? 【千物語】【魔具】【星空の境界線】と同じエンドコンテンツだ。別に自然と多くなったんだぞ?」

「解るけど……わからないから、ちゃんと説明して」

「う~ん……。ちゃんと言うと。1987年と2002年と2009年と2018年と2034年の〈皆の時代の力〉だ。【過去の事を振り返ってしまいそうになったら】これで討ち破れ。以上じゃ」

「……。うん、よくわかった。ありがとう。とはいえこれ装備しちゃったら【天下無敵の覇者】になっちゃうよね」

 農林水サンは腕くみしながら、うゥ~ん。と考え込むようにして唸る。

「確かになあ~。どの神道社のゲームにコンバートしても、レベルこそ初期化するかもしれないが。最終マックスは5本の指に届いちゃうよ。時代の力ってそういうものだし」

「じゃあ、飾ってるだけで、使わないことにするよ。最初っから強いのは私の性に合わない。あ、でもここで試し斬りするのなら良いけど」

「ふむ、そうなるとここに訓練部屋が無いのも困るか。んじゃ作ろう」

「ま、それは良いからさ。FROにログイン。そろそろ始めよ?」

「ん~ま、それがいいか。じゃあ行くぞ」

 見ると。ウインドウにはEMO、CW、FROのゲームにログインするためのボタンが出現した。それぞれにプレイ時間が表示されている。

〈ファンタジアリアリティ・オンラインにログインします〉

 すると、ヤエザキと農林水サンの意識はデジタル世界の深淵に暗転していった……。

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