ドラゴン・スピード~VRMMOで【素早さ】に極振りしてみた~
ゆめみじ18
シーズン1 秋葉原の攻防戦
プロローグ 天上院姫 天上院咲
◆プロローグ 天上院姫の場合。
西暦2034年4月18日
神道社、ゲーム運営室に天上院姫(てんじょういんひめ)という中学生ぐらいの運営社員が居た。どうやら重要な企画案件らしく。真剣な表情で話し合っていた。
「何々? 西暦2019年、令和元年。5月18日12時00分に突然、地球に異世界へ通じる【穴】が2つ開いた? 一つは日本で、もう一つはブラジル?」
政府の役員と思いし重鎮は。淡々と企画原案をプリント用紙と共に話す。
「テーマは『幻想曲(ファンタジア) VS 現実性(リアリティ)』でどうでしょう?」
姫は、大方聞いた企画の内容について半信半疑だった。それほどに、前例のない危険な話し合いだったからだ。
「……これって。2034年のゲームの中に。ちょっと昔の2019年と、1500年の大航海時代かっこファンタジーをぶつけて。【戦略シュミレーション】をしてくれって案件だろ? 時系列3つもあるじゃないか! 考えただけでも大変だろこれ!?」
「はい、そのためでしたら。【国家が開発費を出資します】」
「それって……【国民の税金】だろ? つまり公共の公園と同じ。……。これ表立ってやるのか? 極秘裏にやるのか?」
「非公開中は勿論、極秘裏ですが。リリースは表立ってやります」
「……国の要望は解った。だが作り手としての要望も聞いてもらおう」
「と言いますと?」
姫社員は一呼吸おいてから口を開けて話す。
「まずリアリティのほう! 全世界は無理だ! コンピューターが処理できたとしても人間が処理しきれん!」
「それはあなたの処理がですか?」
「エンターテイメントとしてだ! もっと単純にする。ファンタジーはこっちで何とかする」
「解りました、検討します。資金運用についてはいかがしますか?」
「専門外なので他の職員に任せる……」
「かしこまりました。では、『ファンタジアリアリティ・オンライン』計画。ご検討のほどを」
「うぬ……」
天上院姫は本物の老人が唸るような低い幼児声をあげるのだった。
第2世代機。〈シンクロギア〉
民生用VRマシン、ヘルメット型のゲーム機で旧世代に戻ってしまったよも言われるが「今も昔も変わらないバイクのヘルメットと一緒だ」と開発者は主張。
解像度を落とさずデスゲームなどにならないよう脳に与える出力のを低くしたまま解像度の更なるアップに成功した。
2032年XX月:天上院姫、神道社にとにかく入社。第2世代機『シンクロギア』に天上院姫は関わっていない【無監修】である。【2つの】メインプログラムが互いを修正し合うことで自身をメンテナンスしており、ゲームを滞りなく運営・維持している。【天上院姫は無監修である】。
現実世界2034年8月1日。
第2世代機『シンクロギア』から新たに乗り換える新機種、第4世代機『ミラーフォース00(ダブルオー)』オープンベータテストは紆余曲折あり幕を閉じた。
現実世界2034年9月1日。
夏休みも終わり、学校の授業が始まり。季節が夏から秋に移り変わるころ。
前回発生した接合性的に鑑みて、失敗や成功を噛みしめながら。更にパワーアップした新機種。
第4世代機『MFC000(ミラーフォースコンバートオーズ)』が世に出され、安定化させることで終止符をつける狙いだ。形はスマホ型。性能は『MF00(ミラーフォースダブルオー)』とほぼ変わらないのでテストプレイ時期はなし。
人々がこの新しい機種の愛称を『ケルベロス』と呼ぶのにそう時間はかからなかった。
元々、00(ダブルオー)。【双頭の写し鏡】に固執する理由は天上院姫には無いのだ。【世界は彼女の手の外に零れ出ない】ことが解った以上。昔の本能の赴くままに、好き勝手に遊ぶ体制に戻らなくてはならない。でなければ彼女の【本当の夢】には遠く及ばないのだ。
ただ一つ、違うこと、変わったことと言えば。それらを支える仲間たちや友達、研究者。そして何より天上院咲という存在だった。【独りじゃない】それだけでもう、【何でもできる】そんな気がした。
西暦2034年9月
第4世代機『MFC000(ミラーフォースコンバートオーズ)』との接合性がテストされた。
スマートフォン型の『MFC000』はフルダイブ機能専用機。『ファンタジアリアリティ・オンライン』との相性も問題はなかった。
『エレメンタルマスターオンライン』略称EMOと、『ファンタジアリアリティ・オンライン』略称FROとの違いを説明する。
EMOは基本料金無料プレイで課金機能があり。そのプレイヤーからの課金により、社員に給料が入る仕組みだった。知名度は元から無く。前からあった他社のVRMMOと大差がないと思われていた。実際に大差はなかったであろう。
FROは初めから有料コンテンツで月額1800円である。更に【国民の税金】が社員の給料になるので。安定した定時労働と、給料が公務員のそれとほぼ変わらない振り幅に落ち着いた。前記のように無理にプレイヤーの意見に左右されず、徹夜もせず。精神的不安も軽減。安心して自分達の良かれと思うクオリティアップに集中できるようになった。それは社員の私生活の安定性も確保できたと言っても過言ではない。EMOと比べてシステム的な見た目はほぼ変わらないものの。アクシデントやその他緊急対応、社員増加・社員自身の生活水準の向上につながった。これらはベータテストまでの状況報告である。
目的がEMOは『面白さや人気を取る、そのためなら多少の私生活の犠牲は当然』と言う社風だった事に固執していたのに対して。
FROは『国民の税金で作った事に恥じない道徳性やプレイマナー。時間とクオリティと給料のバランスの正当性の追求』という社風。プレイヤー第一主義なことには変わらないが、根本の制作スタイルが抜本から見直されることとなった。
◆プロローグ2 天上院咲の場合。
物語の主人公が出てくる前には。重々にして舞台を温める前振りが必要だ。そう、今回は今ココこそがそう。だから主人公が出てくる前の、温め役として。なんと前回の物語の主人公がまるで仮面ライダー4号の位置づけのポジションとして。前振りに登場する形となる。
……、というか。この【前座】がないと物語が解らず、入りずらくなる可能性が非常に高い。
「ねえねえお姉ちゃん。EMOからFROのコンバートシステムってどうなってるの?」
「まだない。一緒に考えて、一人じゃ寂しい」
「またかよ! また私巻き込まれてるよ! 今度こそ次こそは一休みできると思ったのに!」
「……言っても。『プレイヤー視点』て大事だからさあ。てわけで話そう」
「……わかった。言っとくけど力まずありのままで話すからね?」
「了解」
「まず、全部のステータス、装備品、スキルの移動は出来ないんだよねえ?」
「まあ、無理だろうな。ゲームが違うんだ。それはAのプレイ時間をBのプレイ時間に足し算しろ! という暴挙に打って出るに等しい。出来るが、つならないゲームになる」
「ふむ、じゃあポ〇モンを例に取ろう。全てのポ〇モンのデータ移動は出来ないの?」
「出来なくも無いが……やっぱり全部は無理だ。私が言ってるのは。ポ〇モンの個体値はそのままに、レベル初期化、道具無し、覚えてる技も1つから。とかそういう話をしているんだ」
本物のゲームという認識に地に足をつけて答えられた天上院咲は。なるほど、と天上院姫を見る。そして、だったらと切り返す。
「あー……。じゃあバンク作ろうよバンク【ポ〇モンバンク】。ゲームとゲームで切り替え、じゃなくて。ゲームと【データの保管場所】とゲーム。それだったら今まで積み上げて来たデータをそのまんま初期化、てのは防げるし。……言ってる意味解る?」
天才っ子天上院姫は、言われた問題に。即答で答えを導いた。
「あぁ、解る。じゃあ【世界樹バンク】を作ろう、【世界樹シスターブレス】のプレイヤーの基礎データが蓄積される。いわば【プレイヤーホーム】が必要なんだな。いわば基地」
「そうだね、ゲームソフトの中にギルドホームは確かにあったけど。ゲームソフトの枠を超えた部屋が居る。そうしなきゃ、ゲームとゲーム間で行き来できるアイテムボックスも作れないし。コンバート、変換も出来ないことになる」
「ふむ、流石に今まで通り作品作って放置。てわけにはいかないわけか」
「長く続けたいんでしょ? 作品を巻き散らして、統合して。また巻き散らすんじゃ。学習してないよ。お姉ちゃん」
「おっしゃる通りでゴザイマス」
というわけで、まず。VR機、MFC000(ミラーフォースコンバートオーズ)の中に【プレイヤーホーム】を作り、その中に【世界樹シスターブレス】の枝葉の小部屋にアクセス出来る【世界樹バンク】という空間を設けることから始まった。
目的は、休憩所。今までのステータス、武器・アイテム、スキル、服装、何だったら高額で購入した家・ロボット・飛空艇・戦艦。などの貯蔵場所としての意味合いだ。ここでは仲間達との会話も楽しめる。
流れとしては。VR機にログイン。【プレイヤーホーム】の【世界樹バンク】にログイン、アイテムなどを選択し、各ゲームにコンバートさせる。ゲームソフトにログイン。ゲームソフトのチュートリアル部屋にログイン。本ゲームの世界にログイン。という形になる。何段階かログインする深層が深くなってしまう形になるが。こうしないと、長くは続かないという判断からこういう形をとることにした。
簡単に言うと。【世界樹バンク】を起点として、全てのプレイヤーは全てのゲームにアクセス出来る。ということだ。
そこには他社のゲームとの接合性などの問題はあるが。少なくとも神道社では、その接合性は何だかんだあってできた。
「まだ本題に入ってないけど。準備段階としてはそんな感じだね」
「ああ、そうだな。コーヒー淹れてくる」
「うん」
そういって現実世界の神道社の社長室で雑談とはとても言えない。プロとセミプロの二人は話し合っていた。
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