お前帰らないの?

  武士が帰らねぇーーーーーーー!!!!


「突然どうしたのだ」


 そうだね、本当にね! でも、びっくりしたもんだから。

 お前が江戸に帰らなさすぎて。


「そんなことを言われてもな。帰るすべが見当たらんのだもの」


 正論である。そもそも武士自身も、どうやってここに来たかすらわかっていないのだ。

 ……いや、本当に? よーく思い出してみ? ここに来る直前、いつもと違う場所に行ってみたり、不自然に発光する石とか宝箱とかに触ったりしなかった?


「ぬーん」


 どう? 思い出せそう?


「難しいな。なにぶん、数年前のことであるゆえ」


 マジでちょっとした過去だもん。どんだけいるつもりだよ……。


「あ!」


 どうした!


「そういえばあの日……某にしては珍しく、神社に行っておったぞ!」


 お、おおお! それっぽいじゃん! 絶対それが原因だよ!


「そこで、少々奇妙な狛犬を見たのだ。犬……にしては頭が猫に似ており、尻尾は二股に分かれていた」


 ほうほう! それでそれで!?


「変だなと思いながらも……某は、暗くなる前に家に帰った」


 うんうん! ……うん?


「そのまま食事をし、気持ちよく寝た。次の日は父の仕事を手伝い、出先でダンゴを食べた。あの店のダンゴは絶品でな、ぜひ大家殿にも食べてもらいたいと……」


 待って待って待って。話が逸れてきた。


「ぬ?」


 ぬ? じゃないよ。それでお前、どうやってここにやってきたの?


「知らぬ。気づいたら来ておった」


 じゃあさっきの神社は!?


「大家殿に、ここに来る直前何か変わったことはなかったかと聞かれたから」


 あ、だから教えてくれたのね。でも不思議な神社だったなぁ。なんやかんやで関係あるんじゃないの?


「しかしそこから大家殿の元に来るまで、たっぷり二月ほどは空いたようにも思うから……」


 因果関係、無っ!!!!

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