歯
甥っ子の歯が抜けたらしい。
といっても甥っ子は五歳。当然抜けたのは乳歯である。
「下の歯か? ならば天高く放り投げねばならんな!」
意気揚々としているのは武士だ。つーかその文化、江戸時代からあったのか。
「無論、某もやったぞ。力一杯こう、竹のてっぺん目掛けて投げてな」
竹。
「すると父上の頭にコツンと」
落ちてきたのか。
「否、すとれーとにぶつかった」
とんだノーコンじゃねぇか……。
「大層ちいこき歯だったので、手元が狂ったのだ。ところで、甥殿の家にはちゃんと投げられる竹は生えておるのか?」
どうだろう。今は乳歯を保存しておく人もいるって聞くし、そうとも限らないんじゃ?
「歯を保存!? 穴を開けて紐を通し繋げて首にかけるのか!?」
発想が蛮族なんだよ! やるにしても、せめて加工して一個とか二個とかだろ! なんで全部繋げちゃうんだよ!
そもそも竹に向かって投げるって話自体初耳なんだけど、どうなんだろうか。まあいつの時代も歯は大事なものである。甥っ子殿においては、末永く健康な歯でいてほしいと思う。
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