おすすめゲームの話

 武士はゲームが好きである。

 テレビゲームのほうね。でも慣れていないので、アクションゲーム系は何かと私に手伝ってもらいたがる。というか、一緒にプレイしろと迫ってくる。

 別にいいけどね。私もゲーム好きだし。


 で、どういうものがお好みで?


「うむ! 某は初心者であるからして、やはり易いげぇむが良いな。かつ大家殿とわくわく冒険できるものがよい! 明言してしまえば、某ができずとも横の大家殿が何とかしてくれるものが良いが……」


 そんな都合のいいソフトがこの世にあるとでも???


 あります。それが「星のカービィ ディスカバリー」です。


「なんぞこの愛らしきぽよぽよの桃色はーーーっ!!」


 ツカミはばっちり。武士はべったりとテレビにはりつき、ピンク玉に魅了されていた。

 「星のカービィ ディスカバリー」。最近発売されたカービィの新作です。シリーズ初の3Dアクションであり、その舞台はまさかの廃墟。ポストアポカリプスな世界観で、我らがカービィが縦横無尽に大暴れします。

 操作感もとても良く、思うように敵に攻撃が当たらずストレス……なんてことがまず無い。謎解きもほどよい難易度で、いい感じに悩んでいい感じに進められる。

 じゃあ逆に簡単すぎるんじゃ? と思われた諸兄らに告ぐ。安心して欲しい。やり込もうと思えばマジのガチで難しい。ミニステージのタイムアタックは大の大人ですら泣きを見ました。

 まあそんなことは二の次です。何故なら今作の最大にして最強のポイントは、カービィ及びワドルディ達の圧倒的なかわいさなのだから。


「なんと……力を合わせて細々と暮らしておった赤きまんじゅう達が、次々と獣達にさらわれておるだと!?」


 早速ストーリーを始めてみます。時空の裂け目的なものに吸い込まれ、異世界に来てしまったカービィ。するとそこで、同じく異世界に来てしまったワドルディ達が原住民達にいじめられていることを知ります。挙げ句の果てにさらわれ、捕らえられてしまったワドルディ。彼らを助けるのが、この冒険の大きな目的となります。

 で、このカービィを手助けしてくれるのがバンダナワドルディという勇敢な友達。槍を片手(両手?)にわにゃわにゃ戦ってくれます。そして、この子がいわゆる2Pキャラです。


 つまり、私が操作するキャラです。


「ぬぬう、まんじゅう達が檻に入れられて可哀想だ! とく助けに参るぞ、赤大家殿!」


 うっす、桃武士さん。サポートは任せんしゃい。

 武士のやる気は満々です。冒険スタート。


「ぬわーっ!」


 だけど初っ端から敵にぶち当たりました。


「大家殿ーっ!」


 はいはいよ。わっしょい!(敵を倒した音)

 武士が操作に慣れるまで、せっせと先回りして道を掃除しておきます。ところでこのバンダナワドルディ、カービィさえ生きていれば体力が尽きても何度でも復活できる親切仕様です。え? じゃあなんで武士がこっちじゃないのかって?


「某がかびーを使いたいからに決まっておろう!」


 だそうです。子供ってそういうとこあるよね。


 武士もだんだん慣れてきて、敵からコピーした能力を使えるようになってきました。ボタンぽちぽちスティックぶんぶんやってたら何か倒せるんで、とても楽しそうです。

 あと体力が少なくなっても、二人プレイなら大丈夫。ゲットした回復アイテムがあれば、相方にタッチすることで体力を分けてやれるからです。


「接吻!!?」


 断じてキッスではない。ハイタッチです。

 しかし基本形が球体のため、角度によっては余裕でキッスに見える。よってカービィの体力が無くなりピンチの時、「接吻! 接吻!」と走ってくるバケモノが爆誕することなりました。カービィは可愛いけど武士は可愛くない。


 あとはまあ、二人プレイあるあるとしては進め方の方向性の違いかな。


「大家殿ぉー! 何故金を貪るか! それより先へ進むぞ! まんじゅう達を助けねば!」


 うるせぇ、金だ! 異世界だろうが何だろうが、最後にものを言うのは金なんだよ! いいからお前もそっち漁れ!


「廃屋で金を探すなど、やっとることが盗っ人のそれではないか!」


 打ち捨てられた金に価値を見出してやって何が悪い! 待て先に行くなまだブロック壊してない。


「んぬぅーっ! あ、隠し赤まんじゅう」


 あ。


 方向性の違いで揉めている時に、ステージに隠されたワドルディを偶然見つけてしまう。二人プレイあるある。


 そうこうしている内に、中ボス戦まで来ました。ゴルルムンバという、でっかいゴリラです。

 ……いや、ほんとでっけぇのよ。カービィ何個分だろう。


「ごるるむんば!」


 そして名前の響きをいたく気に入る武士である。


「倒すぞ! 倒して赤まんじゅうを助けてやるのだ!」


 おうよ!


 猛攻をかいくぐり、もっぱら敵の股下にて攻撃を繰り出す。ここまでくると武士もだいぶ操作に慣れ、頼もしい攻撃力で敵の体力を削っていく。

 だが、ゴルルムンバの手が大きく振り払われ、武士(カービィ)の体を掴んだ!


「のわああああああああ!!!!」


 叫んでねぇで抵抗しろ!!!!


 スティックガチャガチャした結果、無事に逃げられました。その後「もみくちゃの怒り!」と半泣きになる武士と共に攻撃を続け、なんとか撃破。ワドちゃん達を助けることができました。


「ふむぅ、楽しかった」


 満足げな武士に、私も買ってよかったと嬉しくなります。


「よし、もう一戦」


 姿勢を正す武士を、私は温かな目で見つめます。なお、この時点で夜の十二時。私は無言で、ゲームの電源を切りました。

 武士はゴルルムンバもかくやの雄叫びをあげていましたが、ディスカバリーはオートセーブなので大丈夫です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る