使命

 ところで、お客様の中で武士を飼われてる方はいらっしゃいませんか。

 ある日家に帰ったら普通にいた感じのノリです。深く考えずダラダラと住まわせてる感じだとなお良しです。周りのお友達でも構いません。とにかく、いたら教えてください。

 武士、これあとどんぐらいうちにいるんスか。


「よもや某には、何か使命があるのかもしれんな……」


 私がインターネットで『武士 現代 タイムスリップ』とか『武士 引き取りたい』とか『メルカリ 武士 相場』とか検索していると、スイカを食ってた武士がふと呟いた。

 今回はどんな漫画を読みすぎたというのだろう。


「バクと風車(ふうしゃ)」


 バック・トゥ・ザ・フューチャーか。すぐに分かってしまった自分が嫌いだ。


「彼らのように、きっと某もまた運命を変える為にここに現れたのだ! もしくは世界を丸ごと変えるような使命を持っておげほげほがふっ」


 ほら食べながら話すからスイカの種変なとこ入っちゃったじゃんー。お茶飲みなさい、お茶。つーかあれはむしろ運命を変えないようにする話じゃないかね?

 そんで使命って何よ。お前にできそうなことなの?


「うむ。例えば、某世界的感染症の撲滅とか」


 武士どころか一個人で可能な規模じゃねぇわ。


「世界中の腹を空かせた子供にパンを配ってまわるとか」


 それはアンパンマンだな。


「某の歌で世界が愛に包まれたりとか」


 あったなぁー、そういうアニメ。なんて名前だっけ。


「そんな感じである!」


 武士関係ねぇぇぇぇぇぇ!!!!


 いや、お前もっと武士が武士であることのポテンシャルを踏まえた使命を望めよ! 「サムライせんせい」とか読め! 学習塾やってんだぞ、あのお侍さん!!


「しかしそれでもし某が問題を起こした場合、責任は大家殿にも向かうことになるのだぞ。おぬしに丸ごと某を背負う覚悟はあるのか」


 無いねぇ。




 こうして、特に何の使命も持たない武士は、引き続きうちでお気楽居候生活を続けることになったのである。やれやれ、やっぱヤフオクかな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る