くすぐる
「くすぐられるのが弱点です」と言ってる可愛い女の子がいたんですよ。
この件についてはどう思います、武士さん。
「自ら弱点を明かすなど、愚行極まれり」
うむ。
「だがこう考えることもできる。かの者はわざと弱点を晒したのだ。そしてあえて懐に忌み敵を飛び込ませ、その隙にブスリと心臓を刺す気でいるのである」
なるほど、肉を切らせて骨を断つってやつか。
「いずれにせよ、相当な覚悟を持っていないとこの言葉は出てこぬ。愛い顔をして、天晴れな心意気。見上げたものよ……」
二人して、テレビを見ながらうんうんと頷き合う。
――何故、こんな会話をしているのか。
判明したのだ。私達二人とも、くすぐられるのが苦手であると。
「くすぐられると笑いが止まらんなるでな。某、武士として男として、そういった姿を見られるのは甚だ決まりが悪い」
そっか。それもわかる気がするな。
「気がするということは、大家殿はそうではないのか?」
うーん。そもそも私は触られるのが嫌いだからね。
「触られるのが……」
そうそう。小学生の頃、安易にくすぐってこようとした友人に驚き無意識に肘鉄を繰り出してさ、すごく先生に怒られたことがある。防御が攻撃に転じてしまったんだ。
「ほ、ほう……」
あと猫ってさ、撫でられる場所間違えると怒るってよく聞くじゃん。私もうそれ猫側の気持ちがわかるんだよ。あれは触ってくる人間が悪い。噛むぐらい全然する。
「ふむ。なんだかそこまで言われると試してみたくなってきたな」
そっか。
じゃあちょっと待ってくれ。お前の方がスピードあるし力も強いんだし、ハンデとして指の間にカッター挟ませてくれ。
「待て! それだと大家殿の拳が掠っただけで某血まみれになってしまうぞ!」
あなた……『覚悟して来てる人』……ですよね。人を「始末」しようとするって事は、逆に「始末」されるかもしれないという危険を常に『覚悟して来ている人』ってわけですよね……。
「あ、じょじょでござるな」
私はそれぐらいの覚悟でくすぐられるのが苦手だ。
「それはもう殺意と何も変わらんのでは。というかそういうことだから嫁の一人も……」
参るッ!!!!
「ぬぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
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