新キャラオーディション2
次に入ってきたのは、おかっぱ頭の可愛らしい女の子だった。
「はじめましてぇ! 座敷童子のトウです! 特技はおうちを幸せにすることです!」
いいじゃん。
「だいすきなのはごはん! 炊飯器三つをからっぽにできます!!」
……うん、まあそれぐらいならおうち幸せにしてくれるのでチャラに……。
「一食につき!」
ならねぇわこれ。今以上エンゲル係数増えたら私にエンジェルのお迎え来ちゃう。いや上手いこと言おうとして失敗したな、私。
それに座敷童子ちゃんがいてくれる内はいいけど、いなくなったらその家滅びるって言うしな。私はともかく、武士に愛想つかして出て行っちゃうかもしれないし。
そんでそうなったら家が滅びる。住んでるの賃貸なのに。
というわけですいません。今回はご縁が無かったってことで。
「次の方ー!」
次に武士に呼ばれて入ってきたのは、金髪をなびかせたバインボインの西洋美女だった。
「……コードネームは月光……」
もうこの時点でヤベェもん。
「特技は……そうね。アナタの望む人、金、宝石……何だって奪ってくることができるわ」
「それはすごいな!」
「あとは……料理も少しはできるわね」
「うむ、ありがたきことよ! して、前職は何であるのだ?」
パイプ椅子に足を組んで座る月光さんは、どこからともなく取り出した煙草の煙を燻らせた。
「――マフィアの女」
却ーーーーーーーっ下!!!!!!!!!!
ダメだよ! 『武士がいる』はほのぼの日常系コメディなの! 反社会系組織とは関わっちゃダメなの!!
いやマジでダメだって、これ! 絶対いずれ私か武士のどちらかに恋愛感情が芽生えて、そんで月光さんを取り戻しにきたマフィアから、あぶれた方が庇って逃がしてくれる展開だもん! 見えるもん、「惚れた女を守り通すのが武士道だ」っつって蜂の巣になる武士の姿が!
「大家殿は少々考え過ぎではないかと思うのだ」
すいませんが、今回はご縁が無かったということで。
「次の方ー!」
次に入ってきたのは、フレンドリーな雰囲気のイケメンだった。
「僕の名前は阿手馬夫(あてうまお)」
そして適当なネーミングからほとばしる嫌な予感である。
「前職はBL系の世界観で暮らしていました。ですが、出る作品出る作品ことごとく当て馬にされて幸せになれなくて……。今回は運命の人を探したくて、応募しました」
帰ってください。
「ですが、運命の人……」
椅子から立って、回れ右して、全速力でドアに向かってください。
「個人的には大家さんが好……」
帰れええええええええええ!!!!
私は無理矢理追い出した。これ以上ここで奴をのさばらせるわけにはいかないからね。何が起こるか分からねぇからね。帰れ。帰って別の人と末長く幸せに暮らせ。
「次の方ー」
武士は一切動じず、次の人をよんだ。
だが、しばらくドアは開かず……。
数十秒後、半分透けたオッサンがドアをすり抜けて入ってきた。
「おわーーーーーーーっ!!!!」
武士と二人で絶叫した。死ぬほどびっくりした。
「山田です。幽霊です」
でしょうね。
「正直死んで五年ほど経っているようなのですが……あまりすることもなく、普段はその辺を漂っています」
浮遊霊ってことか。
「だからそろそろ腰を落ち着けたく……」
我が家を終の住処にして地縛霊になろうとしてんじゃねぇよ。
「いけませんか」
いいわけないだろ。
正直武士ってだけでもだいぶ飛び道具なのに、幽霊とかもう手に負えないよ。勘弁してよ。
よって、幽霊の山田さんには丁重にお帰りいただいた。
「……」
……。
「大家殿はなかなかに厳しい審査をするのだな」
逆に受け入れられる奴心広過ぎじゃね?
「ということは、その大家殿に住まわせてもらっておる某は、よほど人間ができたものと見える!」
いやー、そういうわけでもねぇんだけどね?
あ、だめだね、これ。私の話聞いてねぇや。得意になりやがって腹立つ。
そんなわけで、オーディションは特に何も得ることがなく終了しました。いや回を跨いでまですることかよ。
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