風邪ひいたら更新するアレ

 またね、風邪をひいたんすよ。

 流石に会社にいられなくて、上司に「帰りたいっす」と言ったら、「今色々アレな時期だし、社用車使っていいから病院行ってこい。車は次出社する時に返せばいいから」って言ってもらえたんスよ。

 そんなわけで、三十八度の体引きずって病院に行ったんです。で、知らなかったんだけど、今コロナの影響で発熱してる人は特定の時間帯でしか受診できないんですね。みんなはちゃんと事前に調べてな。車の中で二時間待ちぼうけをくらった私との約束だ。


 そんなこんなで、今。


「くるま」


 アパートに帰ってきたら、たまたま鍛錬が終わった武士がじーっと社用車を見つめていた。


「……買ったのか?」


 いや、会社のだよ。


「ふむ」


 そしてまた、じーっと見つめ始めた。

 ……武士と出会ってから一年ちょい。最初こそ走る鉄の馬におっかなびっくりしていたものだったが、流石にだいぶ慣れたらしい。


「触ってよいか?」


 良いよ。


「ぬ、ほのかに温いな。よーしよしよし、いい子だぞ」


 餌でもやりそうな勢いである。


「この子は何を食すのだ」


 え? 餌?

 ……ガソリンのレギュラー。


「それは異国の菓子か?」


 ……。

 そーだよ。


「某も餌付けをしてやりたい。今菓子は持っておるか?」


 いや、持ってない。ごめんな。


「ぬぅ」


 すまん。


「……」


 ……。


「……大家殿、顔色が死ぬほど悪いな?」


 あ、気づいた? 実は今三十九度あるの。


「寝てないといかんではないかー!」


 ああー、運ぶな運ぶな。成人男性俵持ちすな。

 あ、でもこれ楽だな。武士、すまんがこのまま頼む。


 こうして、今布団の中でこれを書いているのである。熱はまだあるが、こればかりは仕方ない。鼻水止まらねぇ。

 ところで、武士はしきりに車の様子を気にしていた。「あれは腹は減らぬのか」「寒くないのか」「風邪は移らんのか」と。

 まだ、車は生き物じゃないと伝えられてない。まあそれも風邪が治ってからでいいかなぁと思うのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る