第48話 「タクシー運転手はモテる」


「またね~」

そう言って降りていくお客様は振り返って手を振ってくれた。


タクシー運転手になって早2年半。

ネガティブなニュースがあるように、有名人がテレビでクレームを言うように、SNSで批判が起きるように、

タクシー運転手は良い見方をされる職種でないことは理解していた。


それでも生活のためだからと選んだこの職業につくと、そのイメージ通りのところもあるが、違うところもある。

結局は人と接する職業なんて受け取り方が違えばどれも摩擦のようなモノが起きるが、タクシーは料金体系や密室で受ける不快感が摩擦を大きくさせている。

思っていたほどタクシー運転手を嫌う人はいないし、タクシー運転手も良い人は多い。

通勤電車のあのドンヨリとした空気で朝から疲れているなんてこともない。

意外とノビノビと仕事出来るのがタクシー運転手の良いところ。


それに、世代別に好かれる。


70歳を超えたお年寄りの方にとっては貴重な話相手になる。

たまに凄く元気なのに「83歳だよ!」なんて言われるからビックリする。


60代のまだ現役のおじさんやおばさんからもよく話しかけられる。

年齢が下がるにつれて話しかける数は減るが、3,40代でも

20代でも話しかけてくることはある。


この間は、去り際に手を振ってくれる女の子がいた。


両親と姉とその子で乗ってくると、その家族の目的地であるマンションの前までお送りした。

家族で食事でもいっていたのかもしれない、満足そうな4人を無事に送り届け、支払いを済ますとそれぞれ降りて行った。


特に会話をしたわけでは無かったが、女の子は降り際に「またね~」と言い、元気に家族で家に向かっていた。

はずだったが、両親、姉がマンションの方向へ歩く中その子だけ立ち止まり

こちらを向いた。

小脇にはぬいぐるみを抱えている。


すると家族が見ていないなかで、笑顔で手を振り

こちらも笑顔で手を振り返すと嬉しそうに、小脇に抱えたくまのぬいぐるみと家族のもとへ走って行った。


まだ5,6歳くらいだっただろうか。


そういえば、この間は男の子も手を振ってくれた。


いや~モテるな~。

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タクシードライバーは見た ヨナシロ @taxK

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