あとがき
『ソラのカタワレ』リサ編 あとがき
特設サイト(※)のほうにあるように、本作品『ソラのカタワレ』は二〇〇二年に発案された作品群四つのうちのひとつになります。
1.『黎明の夢』(改題、リメイク予定)
2.『ソラのカタワレ』
3.『喪われた歌』(仮題)
4.『黒の劫火、赫のドゥーム』
『黒の劫火、赫のドゥーム』がタイムパラドックスものとして矛盾なく書くのに注意が必要だったように、『ソラのカタワレ』はそれと同規模の物語を二本同時に執筆するという挑戦になりました。
とはいえ、相変わらずながら、「作品の中に入って」執筆を始めてしまうと、自分の存在が消えてしまうのが作者というもの。読者のみなさまが没頭してくださったように、作者もまた没頭していたというわけです。
『ソラのカタワレ』の構想自体はリサの物語として開始されました。それは、とりもなおさず、アーケモス・シリーズ第一作目である『黎明の夢』のヴェイルーガの妹ミオヴォーナの物語として、『黒の劫火〜』のミクラの妹、水先案内人リサの物語としてです。
+ +
リサは普通の女子高生。むしろ大人しそうなメガネキャラ。なのに正義感に走って行く。悪漢たちをバッタバッタと倒していく。読者のみなさまは最初、彼女の正義感は好ましいものと見えたと思います。
それが話が進むにつれ、彼女の正義感は呪いであり、彼女は正義感によって思考停止していることに気づいていくような仕掛けになっています。
数多くの悲劇に見舞われるリサですが、その原因となるものが彼女の正義という美徳なのですから、一層悲劇的なのです。リサにはなにも邪悪なところがないですから。
そんなリサですが、おのれ自身と向き合い、トモシビという仕掛けを活用しながら、自身のインナーチャイルドを育て直していきます。いわば、自分で自分を育てなおすのです。
元々、リサは親のネグレクトで崩壊していた人物だったわけです。成績優秀、正義感もあり優しい。非の打ち所なんてなさそうでありながら、「正常人に擬態した狂人」だったわけですね。
自分で自分を修復しながら、最終的には宇宙スケールの強さにまで成長します。いったい、レベル表記があれば何桁だったんでしょうか。ゲーム化したらすごいことになりそうです。
そうなっておきながら、大人になると、力を行使することは、逆に控えるようになります。これも高校時代とは違いますね。
思えば遠くに来たもんだ。
この「思えば遠くに来たもんだ」が『ソラのカタワレ』に通底する仕掛けです。リサたちは最初思い描いていた世界観とはまるで違うような人生を歩むようになっていきます。
その果てなさ。人間の限界のなさを、リサという平凡だったはずの日本人の女の生き様から漂わせることができたのなら、彼女を充分に生きさせてあげることができたのではないかと思います。
僕たちの人生もいずれ、どこか遠くに行くのかもしれません。彼女たちのように逆境に揉まれているうちに。
そんなことを楽しみに、みなさんと一緒に生きていければ、きっと面白い世界が待っているんじゃないかと思っています。
takarai
※ 特設サイト: https://sepia-citron-b77.notion.site/NIL-AQ-b6666b9e57ba48c7a6faa53934dd2bab
天穹の片割れ◆リサ編 【日本列島、異世界へ。夜ごと悪討つ女子高生】 鷹来しぎ @shigitaka
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