44 漫画の実写映画と向き合いつつ、2021年を生きる術を探す日々。
ここ十日ほど、漫画原作とした実写映画をやたら見ています。
とくに2010年から2020年までの11年に上映された映画を中心に見ていて、2010年代を漫画の実写映画で振り返っている気持ちになっています。
まず、なぜ漫画の実写映画を見ているのか、を説明させてください。最初は一緒にカクヨムをやっている倉木さとしの持ち込み企画でした。
漫画の実写映画をオススメする連載をしたい、というもので、倉木さんが年間100を超える映画を見ており、創作をする際も参考にするのは映画である、とのことでした。
映画を語ることで創作論を語る、というような構造になるのかは分かりませんが、小説家が映画好きであるのは間違いありませんし、総合芸術としての側面を持つ映画を語るのは面白そうだなぁ、と思ったのが最初にありました。
紹介する映画は手に取りやすいものとして、漫画の実写映画にしよう、と言う提案があって、僕はそれを了承しました。
僕自身、漫画の実写映画は結構見ていたので、語れることはあるかな、と思っていました。
その上で、11月頃に入って、ゲンロンの「宇宙人にオススメするマンガ家100人を勝手に選ぶ!」という企画で選ばれたマンガ家をnoteにまとめている方を見つけて、面白いなぁと思って読んでいました。
「宇宙人にオススメする」って言うのは天才的すぎて真似できないんですが、せっかくなら僕と倉木さんが選んだものをリスト化した時に意味が出て来るような連載ができたら良いなと考えはじめました。
そうして思いついたのが、2010年から2020年の11年間の漫画の実写映画をお互いに語り合い、倉木さとしのオススメと郷倉四季のオススメ、そして2021年から振り返って重要な作品を年間一作ずつ選ぶ、という連載でした。
更に、ウィキペディアに「アニメ・漫画の実写映画化作品一覧」というページを見つけて、ここに年代ごとの公開作品が載ってもいたので、そのURLも倉木さんに送り、企画意図を提案しました。
倉木さんからオッケーをいただき、お互いに現状で見ている漫画の実写映画とそこから推したい作品などを一覧にして送り合いました。
その中で、見ておきたい作品などもあって、しばらくは漫画の実写映画について考える日々になるなぁ、と思い実際そのような生活を送っています。
乱雑に見ているので法則性はありませんが、ここ十日で見た作品を少々羅列させてください。
「君に届け」「大奥」「GANTZ」「忍たま乱太郎」「モテキ」「スマグラー おまえの未来を運べ」「カイジ2 人生奪回ゲーム」「るろうに剣心」「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」「潔く柔く」「るろうに剣心 京都大火編」「るろうに剣心 伝説の最期編」「海月姫」「にがくてあまい」「かぐや様は告らせたい 天才たちの恋愛頭脳戦」「大奥 永遠[右衛門佐・綱吉篇]」「GANTZ PERFECT ANSWER」「好きっていいなよ。」
並びには意味がないんですが、映画を見る度に、この作品は何年の作品で……という風にウィキペディアで確認していると、一つ気づくことがありました。
僕と倉木さんが語りをはじめる2010年に漫画原作の実写映画は20本で、今年の2020年が24本です。それほど変わっていないように思えますが、一年前の2019年には47本が実写映画化されています。
2020年はコロナの関係で上映出来なかった作品もあったと考えれば、2019年の方が正しい数字とすべきでしょう。
つまり、2010年から2019年までの間に漫画の実写映画というものがポピュラーなものへと変わっていたのは間違いありません。
その期間に何があったのだろう?
という問いは適切なもののように思います。
今回、漫画の実写映画について語る連載の準備をはじめるにあたって、倉木さんとも共通の友人に電話で「漫画の実写映画のベストを教えてほしい」と尋ねてみました。
「俺は、漫画の実写映画はご法度だと思っているんだよね」
と友人は言っていました。
なんとなく、言わんとすることは分かります。
僕はAcid Black Cherryというヴィジュアル系バンド(正確にはソロプロジェクト)が好きで、ボーカルのyasuが2010年の前半くらいにニコニコ動画で雑談配信をしていたのを見たことがあります。
そこでyasuが「漫画原作の実写映画の成功した作品ってあったっけ?」と言っていて、スタッフが「NANA」はどうかと尋ねていました。
「NANAね! けど、音楽業界にいる身としては、ツッコミを入れたい部分のある作品だったんだよね」
と結局は、漫画の実写映画の成功作品はこれだ、という結論は出ずに配信は終わっていました。
yasuの好みは当然あると思いますし、僕が電話した友人の「ご法度」という気持ちも尊重されるべきだと思います。
ただ、2010年前半頃までは、漫画の実写映画は成功しないコンテンツという印象を持つ人が多かったように思います。
そんな訳で、2000年代の漫画の実写映画に目を向けてみると、「ピンポン」「ドラゴンヘッド」「海猿」「ALWAYS 三丁目の夕日」「デスノート」「NANA」「ハチミツとクローバー」「ラフ ROUGH」etc.
あくまで僕が気になるタイトルを挙げているだけですが、「ピンポン」や「デスノート」は成功作品だと思いますよ、yasuさん!
ちなみに、倉木さんは2000年代で言うと「20世紀少年」を推すそうでした。僕は20世紀少年を見ていないので、何ともなのですが、00年代で三部作は一大プロジェクトだったんだな、と思う次第です。
また、2010年には「ライアーゲーム ザ・ファイナルステージ」「のだめカンタービレ 最終楽章 後編」「THE LAST MESSAGE 海猿」「猿ロック THE MOVIE」という、まずドラマがあって、その続編としての映画が多く公開されています。
今回、2010年から2020年の漫画の実写映画を語る連載をする予定ですが、その地盤には00年代からの漫画の実写化に対する試行錯誤があって、土壌ができたからこそ2019年には47本という恐ろしい数の実写化が行なわれたのだろうことは間違いありません。
と言っても、ずぶの素人である僕が漫画の実写映画の流れを振り返ったところで、もっと素晴しい映画評論をされる方は、それこそ星の数ほどいらっしゃいます。
だから、実写映画の土壌について触れつつ、今を生きる僕たちに必要な言葉を拾ってこれないかな? と今は考えるようになっています。
例えば、2013年3月2日に上映された「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」が2011年の3.11を意識して作られた映画でした。
と言っても、初見では年代を気にせず見ていた為、僕は「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」を震災後の作品として、位置付けられていることを知りませんでした。
今回、漫画の実写映画の連載をする、ということで色々調べていくと、「すーちゃん まいちゃん さわ子さん」の監督のインタビューがあり、そこで以下のように語っていたのを見つけました。
――震災以降、世の中は目にするもの耳にするものが不安だらけで、先行き不透明で神経過敏になりがち。ネガティブに閉じこもるより、信じられるもの、今日より明日、少しずつでも良くするためにも、逆に自分の寂しさや切なさにちゃんと向き合い、自分の心と体と同化して、自分の心の声に耳を澄ましたり、考えたりする時間が必要です。
この考えは、コロナの波がまた日常を覆いはじめた2020年の終わりを生きる僕たちにも有効な言葉でしょう。
すーちゃんや、まいちゃん、さわ子さんが常に自分の心の声に素直に耳を傾けていたように、僕も「自分の寂しさや切なさにちゃんと向き合い」「自分の心の声に耳を澄まし」て考える時間をちゃんと取って行きたいですし、漫画の実写映画と向き合いつつ、今を生きる術を探していきたいとも思っています。
そして、そんな今を生きるのに、少しでもお役にたてる言葉を紹介できる連載を2021年から倉木さんとやっていけたらと考えています。まだ、本当、どんな連載になるか分かっていないんですけれども。
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