将来部(倍)にして返します!
もし今あなたにやるべき仕事や日々の義務があっても、そこで自分の親兄弟(または親友)が自分に反感を抱いていたり関係性に溝があるままだということに自覚的になったならば、その仕事や義務をとりあえず置いておいてでも、まず行ってその親兄弟、親友と仲直りをし、それから帰ってきて普段の仕事をしなさい。
あなたを訴える人に連行されて道を行く場合、その道中にあるうちに何とか和解できるよう手と心を尽くしなさい。さもないと、その人はあなたを情け無用で裁判官に引き渡し、裁判官は獄吏に引き渡し、あなたは牢に投げ込まれることになる。
はっきり言っておく。あなたは課せられた刑期の最後の一日を全うするまで、決してそこから出ることはできない。
【マタイによる福音書5章23~26節を筆者なりの表現で言い換えたもの】
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まさかとは思うが、上記の文章を読んで「そうか! 身近な人と仲たがいしていたら、今すぐにでも仲直りしとけというアドバイスね! 確かに放ったままにしておいたらこじれちゃうよね!」なんて文字通り受け取って終わりじゃ……ないよね?
解説するのも気が引けるが、ここはそういう人間関係上のこじれに関してだけという狭い話ではなく、それはあくまでも一例として書かれてあるだけで、人生の出来事全般において「今やるべき(やったほうが絶対いい)ことを、何か言い訳を付けてやらないでいること」への警告となっている。かの有名な林修先生も言っているではないか。
●いつやるか? 今でしょ!
NHKの朝ドラ『ちむどんどん』の登場人物である主人公の兄(ニーニー)はだらしない男で、今朝も見ていたら働いていた職場に置手紙をして姿を消してしまう。「前借りした給料は、将来部(倍という字を間違って学習したと思われる)にして返します!」
皆さんは、この言い訳をどう思う? 将来倍になって帰ってくるのならそれもいいか、と思って認めます?
例えばあなたがお店の経営者だったとして、客が「一年後か二年後かくらいに私お金持ちになっているから、その時に倍にして払います!」と言ってきたら?
ニーニーの言い訳の問題点は次の二つ。
●言ってるほうがそれでよくても、目の前の相手には生活があって「今」お金が要るのだということに無理解である。
●百歩譲って相手もだいぶ経済的余裕があり、後に倍になるということを信じてもそれは自由だが、ただ当たり前の話で「未来というものは不確定要素が多く、絶対にこうなると予測した通りにならないことも多い」。ニーニーは将来もやっぱりダメ男のままである可能性も大だ。
スピリチュアルでも、「今ここ」というキーワードで、未来ではない今にこそ在ることで、そこで幸せに在ることの大切さが説かれる。いつか幸せになります、ってそれ今幸せじゃないってことでしょ? いったいいつ幸せになるの。今でしょ!
なのに人は今はこうだから、と現状自分を苦しめるものの前に屈し、今幸せで在ることをあきらめる。しかも将来的にもそれが解消する見通しが立ちにくい場合(立ちにくい、であって立たない、ではない点に注意)、幸せへの戦い自体をあきらめる。
そういう、今をあきらめくすぶる人物に共通する意識下の固まった思いがある。
●今はダメでも、いつかはきっと幸せに——
さっきのニーニーと精神構造は同じである。今はダメだが、先の将来なら自分はイケてるだろう、という希望的観測。
この考え方が曲者なのは、一見良い言葉に聞こえてしまうからである。今はダメでも、将来きっと勝つ! というフレーズを悪く思う人はいないだろう。
周囲をこの言葉で誤魔化してしまえるので(自分自身すら誤魔化せる)、それを隠れ蓑にしていつまでも実際的な動きをしない。今日は忙しい、明日はこれをしなきゃならん、と自分に言い聞かせながら。
「明日やろうはバカやろう」という言葉を聞いたことがありますか? これなんかも、弱さのゆえに大事なことに向き合えずズルズル逃げてしまう人への叱咤激励となっている。
もちろん、ナチスドイツにつかまって収容所に送られ、絶望的な状況の中でそれでも「いつかは生きて帰れるという(今この瞬間はどうしようもない)希望」をもつ、ということならよい。なぜなら、本当の本当に今「どうしようもない」ことが誰の眼にも間違いないからだ。
でも、皆さんの日常の場合は、その気にさえなればどうにかなるのにその気にならないだけ、というレベルの恵まれた環境にいらっしゃる。だから、敵軍に戦争捕虜となるような状況や小公女セーラのような状況とあなたは同じではない。どうにかできる余地がある。
イエスが責めているのは、本当に八方ふさがりで動きようもない人のことではなく、「やればできるのに、もっともらしくできない理由をこさえて自分を守っているような人」である。別に、その仕事今やらないと殺される、とかないでしょ? この法治国家・日本において。だったら、一日休みを取ってでも、心の底に
それは人によっては、あやまりたい・あやまるべきと思っていた人のところに行くことかもしれない。あるいは、恐怖心が先に立って挑戦したい気持ちはあっても挑戦できなかった「何か」をやりに行くことかもしれない。
筆者はまさに今日が、あなたがこれまで向き合うことを避けてきた何かにはじめて向き合えた「記念日」になることを心の底から祈っている。
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