神の国はどこにある① ~Don’t think. Just feel!~

 神の国は、見える形では来ない。

「ここにある」「あそこにある」 と言えるものでもない。

 実に、神の国はあなたがたの間にあるのだ。



 ルカによる福音書17章20~21節



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 今紹介したこの言葉は、世界的に結構有名な言葉である。

 クリスチャンなら、誰でも知っている。(……はず)

 一般的に、この言葉はどう解釈されやすいか。

 だいたい、以下のような感じだ。



※筆者注:信者でもなければ「神の国」という表現はしっくりこないと思うので、ここでは一般人にもなじみのある「天国」という言葉で置き換えることにする。

 


●本当の幸せとは、富や権力、あるいは物質的なものによるのではない。

 それは形のない、誰も奪い去ることのできない心の内側のものである。

 従って、天国は目に見えて素晴らしい実在の世界としてやってくるのではなく——

 そういう物質的意味ではなく、心の中に天国が来る、という意味である。

 あなたの心が幸せであれば、周囲の環境に関係なくそこが天国なのだ。



 平たく言えば、天国は国ではなく心の状態のこと。

 外側のモノではなく、天国とは平和な心だということになる。

 今日紹介した聖書の言葉では「神の国はあなたがたの間にあるのだ」という分かりにくい言葉だが、訳によっては「あなたがたのただ中にあるのだ」とか、ストレートに「あなたがたの心の中にあるのだ」というものまである。

 幸せとは、つまり天国にいるような状態とは——

 外側の何かによってもたらされるものではなく、内側の状態によるものなのだ。



 さて、ここまで述べたのが、今までの一般的な解釈。

 ここからが、筆者流の解釈。

 天国とは、目に見えない心の状態にある、というのは確かにいい線いってる。

 しかし、ちょっとツメが甘い。

 もっと、突っ込んで考えてみよう。



●天国とは、思考で認識できない。



 イエスが 「ここにある」「あそこにある」と言えるものではない、と言った意味は、決して「物質的なものじゃないよ。見えない精神世界のものなんだよ」という浅い意味ではなく、これが天国の状態だ、などと思考で認識できるものではないよ、と言いたかったのだ。



 例え、心の世界で

「私は幸せだ!」 と思ったとしても。

 それは、思考 「私は幸せだと認識し、そう思考している」状態。

 ヘンな話だが、私は今幸せだ! と認識した瞬間にもうそれは過去になっている。

 なぜなら、幸せだ!と心が感じて、その情報が神経を伝達して脳細胞に旅行し、そこで思考として「幸せだ」と知的に認識され自覚されるまでコンマ数秒かかる。

 つまり、認識とはリアルタイムの感覚を捉えていないのである。



●つまり、思考では何もとらえることができない。



 過去もなく、未来もなく、ただ今ここがあるのみなら——

 思考という手段では、とらえようとしてもすべてが指の間からすり抜けてしまう。

 ただ、幸せの残像をかすかにとらえるのみ。さっきまで今ここだった虚像をかすめるのみ。

 厳しいことを言えば、天国とは心の状態である、という説明でも不十分なのだ。

 そういう状態だ、と表現し認識できるものはもはや天国ではない。



●天国とは、感じること。

 それのみ。



 すべては、言葉にした瞬間、認識した瞬間、過去として消え去る。

 今ここをとらえることができるのは、「感じる」ことでしか無理。



 そう。

 感じる、というのは認識するよりもはるかに、今ここに近い。

 この世に現存する手段としては、今をとらえる最善の方法である。

 理屈や認識は、要らなくはないが最善ではない。感じることがまず一番にあってこそ、後付けで「ぼかぁ幸せだなぁ!」と思えるのだ。

 考えるな、感じろ! というのは、考えるよりも感じることが大切だというよりも「感じることでしか、本当に近いことが分からない」ということだ。



 そこで、今日冒頭に紹介した聖句を、ちょっと改変してみよう。

 こんな感じでいかが?



●神の国は、目に見える形では来ない。 

 あなたの外にある現実が、天国のような場所に変わるわけではない。

「ここにある」「あそこにある」 と言えるものでもない。

 それは、目に見えない心の充足こそが天国だ、という以上に——

 本当の天国の状態を、思考で捉えきることなどできない、ということだ。

 実に、神の国はあなたがたが感じることでしか、とらえられない。

 今感じることの中に、天国はある。

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