雰囲気だけ立派な無責任発言 ~もし日本が米国の庇護を離れたら?~
あなたがたのうち、塔を建てようとするとき、造り上げるのに十分な費用があるかどうか、まず腰をすえて計算しない者がいるだろうか。
そうしないと、土台を築いただけで完成できず、見ていた人々は皆あざけって、 『あの人は建て始めたが、完成することはできなかった』 と言うだろう。
また、どんな王でも、ほかの王と戦いに行こうとするときは、二万の兵を率いて進軍して来る敵を、自分の一万の兵で迎え撃つことができるかどうか、まず腰をすえて考えてみないだろうか。もしできないと分かれば、敵がまだ遠方にいる間に使節を送って、和を求めるだろう。
ルカによる福音書 14章28~31節
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『家出』という経験をされたことがある方はいるだろうか。
親と大喧嘩。「こんな家、出て行ってやる!」
そして、短絡的に財布の入ったバッグぐらいしか持たず、駅へ飛び出す。
しかし、数時間が過ぎ頭が冷えてくると——
自分が置かれている 「現実」 が思い出され、身に染みてくる。
もしこれが中学生、高校生なら遅かれ早かれ後悔する。
友達の家に行っても、向こうの親から「お家へ帰りなさい」と言われる。
たとえ都合よく一人暮らしで、子どもだけにマンションが与えられているような友達の家に転がり込めても、どうやって生きていくのか。何日もつか。
ホテルは、未成年の宿泊お断り。(そもそもそんなお金はないだろう)
結局、現実問題としては喫茶店でお茶でもして、夜の公園のブランコで夜風に吹かれながら「えらそうに言っても、自分一人では明日を生きることすらできない」という現実を突きつけられて、うつむいて「ただいま」と帰ってくることになる。
悔しいだろうが、仕方ない。
つまり、あなたが『一人前』でないなら。自立できていないなら——
衝動的に家出するなど、愚の骨頂であるということだ。
気持ちは分かるが、エネルギーを向ける方向としては考えがなさすぎる。
自分一人で自活できないのに家出なんて、無謀なだけだ。
そもそも、独り立ちしていたら家出なんて成り立たないのだが。
今の日本人の頭は、まさにこの家出少年少女のように短絡的・かつ衝動的になっている。トランプ氏が大統領候補になり、その過激な発言に賛否両輪がある。
私は、個人的意見としてはこの人物を危険視している。
(作者注:この記事はトランプが大統領選に立候補し、その優勢が報道された時期に書かれたたものです)
もし仮にこの人物が大統領になったら、皆さんがスピリチュアルに注ぎ込んだ額を返してほしいと思うほど、役に立たない日がやってくる。崩壊の序曲である。
これからは愛の時代、希望しかないと言って希望的観測で人気のあったスピリチュアル指導者は、公約違反で青ざめることになる。
今の日本でトランプ氏に対しての大方の意見は——
●案外、日本がアメリカから本当の意味で独立するいいきっかけになるかもね。
本当の独立のチャンス。
もう、アメリカ追随(言いなり)はやめよう。
だいたい、このような意見であり、これもひとつの転機とポジティブにとらえている。しかし、私が指摘するのは「それって、家出したあと自活できる能力もないくせに、こんな家サイテー!と飛び出すようなものじゃないのか」ということである。
いざ、日米安保がなくなった。日本は自前で国として存在する必要が出た。
では、核保有をするのか? 自衛隊という名前を変えて、「軍隊」にするか?
アメリカと手を切って、そのあと今のままで済むと考えている者が多い。
だから、「ええ機会やん」となる。
そりゃ、反抗期の考えなし中学生が親に腹を立て家出を考えて、「親の押しつけや支配から逃れるいい機会」と考えるかもしれない。しかし、そんなに事は甘くない。縁を切って後、どうするのか。
家出して困っている若者に「いい仕事があるよ」「うち泊めてあげるよ」と寄ってくる悪人に騙され、悔しくても親と同居していたほうがマシだったと言えるひどい目に遭う。
日本は今まで、「美しく」在ることができた。
敗戦の経験から 「もう戦争はしない」と、非核三原則を打ち出し、軍隊は「自衛隊」と呼び、「うちは絶対戦いません」という美辞麗句を言い続けてきた。
でもそれは、日本がまったく何もなく言えていたのではない。これを言うと嫌な気分になる人もいるだろうが、「在日米軍」のおかげもあるのだ。
家出するチューボーは(確かに親にも非があるかもしれないが)、自分がメシ食わせてもらっているという自覚も感謝もなく、親を無価値視する。縁を切ってやる、と簡単に言う。
でも、その親がいないとタイヘンなことになるのである。
実は日本の自衛隊は強いぞ、とかあきれる意見もあるが、何を考えているのか?
私がこう言うからといって、私は日本がアメリカの庇護を抜け、国としてスタンドアローン化していくことに反対なのではない。それでもいいが、そうなるならなるで——
●ちゃんと、やっていける手立ては具体的にあるのですか?
その納得いく代案なりシュミレーションを示してほしいものだ。
今日の記事の最初で紹介した。イエス・キリストの言葉のとおりである。
意識がすべて、とか幸せな気分でいたらおのずと問題解決、というのはない。
ちゃんと、十分に吟味しつくされた問題解決法を、真摯に実行するしかない。
王宮でずっと守られて育ち、下界の裏街道を知らない王女は、この世界に犯罪があるとか、悪意を持って近寄ってくる者がいるということを考えられない。
日本人は、いろいろなものの「おかげ」で他国より高尚でいられた。
軍隊持ちません、戦争絶対反対と言ってこられた。
もちろん、その言葉が示す内容そのものは、重要かつ価値がある。
しかし、この世界では「他との関係」なくしてはそんな内容も意味がなくなる。
壮絶ないじめに遭っていて、明日自殺しかねないという人に、「いじめに負けるな」とか「相手も血の通った人間。話せば分かる」とかいう話が無意味なのと同じである。
感性のにぶった自称「愛を大切にする者」は、性善説に頼りすぎている。
治安の悪い海外裏通りで、成人男性の同行者もなしに美少女JKを一人で歩かせてみ? 襲われない、と胸を張って断言できますか?
無事なケースもあるというツッコミがきそうだが、それだってギャンブルのようなものだ。
国家の一大事を、そういうギャンブルに賭けてもいいんですか?
アメリカの庇護を離れ、丸腰の(しかも絶対にこちらからは手を出さないという保証付きで安心の)日本は、本当に大丈夫? 性善説で「こちらが軍備を持たない、戦争しないという立派な姿勢を見せているんだから、相手も攻撃してこないはず」なんて考えますか?
「宇宙戦艦ヤマト」というアニメで、『絶対に戦わない星』というのが描かれたことがあった。
とにかく、侵略されようが理不尽な攻撃を受けようが、一切「戦わない」のである。逃げすらせず、たた「無抵抗」を貫くのである。
そのコンセプトは星の住人に徹底していて、大人も女子どもも老人も、本当にただバタバタ殺されていく。驚きなのは、いざそういう目に遭ったら自分たちが口先だけなことに気付き、命惜しさに戦ったり逃げたりする者がひとりもいない。
それを見かねたヤマトが替わりに侵略軍に応戦するのだが……この時点で他人に迷惑をかけている(笑)。この世界には自分と同じ考え方じゃない者もいて、それとの兼ね合いも考えず「頑固に美しいあり方を貫く」のは、実は本人たちが思っているほど立派でもカッコよくもない。
むしろ、ウザい。
ただ、そのスピリットはすごい。日本がもし、本当の意味で独立することで、実際そうなってみたあと、何が起きても絶対逃げない、文句を言わないと誓うのであれば、トランプ氏が大統領になろうが、他国の庇護がなくなり自衛の必要が出ようが問題ナッシングだ。
みなさん、そこまでの覚悟があって言ってますか?
それとも、今までみたいに「対岸の火事、政治家任せ」で雰囲気と気分でしゃべってます?
整理しましょう。
私は、個人的政治的意見を言えば、「トランプ大統領には反対」です。
もちろん、対抗馬であるヒラリーが適任というわけではなく、「まだマシ」という程度のこと。「この二人しかいない」という事態が、どっちにしても悲劇なのだが、ヒラリーのほうがまだ悲劇の程度が軽減される。
でもそれは、絶対にトランプがなっちゃいけない、というのではなく、日本はその備えが十分にあるのですか? 発進準備は整っていて言っているのですか? を問いたいだけなのだ。
私が見る限り、そんな準備が爪の垢ほども整っていないようなので、警鐘を鳴らしている。
戦争抑止力としての武装をする気はある? アメリカの縛りから抜けたいわ、かといって兵器軍備は持ちたくないわ……では
●働きたくないけど、おカネはほしい
そう言ってるようなもの。そんなことは、この世界では成り立たない。
ゆえに、今日のメッセージはこれに尽きる。これができてない人が多いから。
●責任の持てない発言はしないこと。
責任の持てない発言は、どんなきれいごとでもゴミである。
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