死体≒ハゲタカ? ~波動というよりは必要~


●死体のある所には、はげ鷹も集まるものだ。


  

 マタイによる福音書 24章28節 



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 これは、イエスの残した言葉の中でも、なかなか難解で意味深な一言である。

 何となくの意味合いは、誰でも汲めるだろうと思う。

 不良学生にとってのコンビニ前やゲーセン? 優等生にとっての図書館?

 私にとってのアダルトDVD販売店?

 いかん、例えがイケてなさすぎる。



 何かと何かが、エネルギー的に(力学的に)惹きつけ合う、引き寄せられるということを、スピリチュアルではよく「波動」という概念で説明をしたりする。

 波動(波長)が同じだから、両者は引き寄せ合うんだと。

 スピリチュアルは、モノに関する具体的な物理現象から、目に見えない人と人との出会いや好き嫌いにいたるまで、すべてをこの「波動」で説明しようとする傾向がある。波動が合う合わないで、人同士や物同士がひきつけ合ったりひきつけなかったり、ということを整理したりする。



 私は、それが物理的現象であろうと目に見えない精神世界的領域であろうと、何かと何かが引き合うという現象を説明するのに、「波動」という概念はあまり役に立たないと思っている。現象としてはそれが働いているように見えなくもないが、実際は違うと思う。

 そこは波動ではなく、イエスの冒頭の言葉こそが当たっていると思う。



●波動ではなく、『必要』。



 死体は、はげたかの好物である。

 はげたかと死体の波動が合う、ってのはかなり解釈として滑稽である。

 この宇宙世界ゲームが誕生する時、『企画会議』ですでに決まっていたのだ。

「ハゲタカは死体に群れる」 って。

 アリは甘いものに寄って行く、って。猫は魚に寄って行く、って。

 それは、その二者間の波動がどうこう、という話ではない。

 スピリチュアルな「出会い」を、波動が合ったとか同じだとかいう言い方で、優越感を持とうとする場合がある。自分が素晴らしいと思う人物と出会えたことで、「波動が引き合わせた」ということにしておけば、自分はその素晴らしい波動に引き寄せられたということで、自分も「良い波動なのだ」と優越感を持てる材料になるから。



 実は、人と人との出会いも、波動というよりすべて決まっていたのであり、もっと言うと、シナリオ上の「必要」である。

 この「必要」という言葉が、この世界で起こっている現象のキーワードである。

 冷たい話に聞こえるが、私が奥さんと巡り合ったのはとどのつまり「必要」である。仕事も、子どもたちも。

 ハゲタカも死体を必要としている。魚は水を、猫は魚を、植物は水を、生き物は食糧を必要としている。すべては、必要という言葉で説明がつく。そこへ、「それでは物足りない!」と感情的に感じる「本質的な」人たちが、愛だの波動だのという言葉を引っ張りだしてきて、立派に飾り立てる。

 もちろん、それは良いことなのであるが。度が過ぎると臭すぎて鼻につく。

「本質ブリッコ」という、スピリチュアル版松田聖子になる人が多いのだ。

 真実とか真理とかいうものは(あるとして)、実に当たり前で無味乾燥なものなのだ。皆が願うほど、ロマンチックでも美しくもない。

 美しくあれ、愛であれとする人間側の願望であり、希望なのだ。



 くっつくもの、出会う者同士。すべてのペアはシナリオによって決められている。

 人間でいうDNAのようなもので、必要な情報がすべてその中にすでにある。

 すべてそのプログラミング通り動き、あちら(天)の視点からはイレギュラーなどというものはない。こっちの幻想世界視点では、予期せぬもの、意外なものと捉えられることも多いが。

 でも、幻想世界を創りあえて遊びに来るくらいだから、この世界を創った意識は、ロマンチストなのである。だから、この世界を説明するのに愛でも波動でも何を持ってきてもいい。

 ただし。あなたと意見を異にするものを 「間違い」「分かっていない」とするな。いくら的を射た考え方を持っていても、その一点においてその人はダメ。

 


 身もふたもないし、冷たいし無機的に思えるだろうが——

 確かにロマンチックのかけらもないが、すべてはそうなるべき「必要」が司っているのだと考えることができたら、ある種の落ち着きが生まれ、状況をしっかり見ることができる。

 オススメなのは、「必要」を認めた後で、それでも幻想を楽しくドラマチックに生きるために、確信犯的に「愛」だの「波動」だのという言葉を用い、この世界を愛でればいい。

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