クリスチャンがひっくりかえる聖書物語 ～イエスが本当に言いたかったこと～

まず神の国と義とを求めよ ～できる範囲のことだけやっとれ～

　何よりもまず、神の国と神の義を求めなさい。

　そうすれば、それらのものはみな加えて与えられる。

【マタイによる福音書６章３３～３４節】

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　有名な、イエスの言葉である。

　長くなるので割愛したが、上記の聖句の前にはこういう前置きがある。

　……何を食べようか、何を飲もうか、何を着ようか（現実世界での成果・成功）と言って、思い悩むな。それはみな、異邦人（神を知らない者）が（他のものより優先的に）求めているものだ。

　自分をボロボロにしてまで優先的に追わなくても、あなたがたの天の父は、これらのものがあなたがたに必要なことをご存知である。

　つまり、キリスト教的な理解としては、こうなる。

　一番大事なのは、神への信仰である。

　神が良くしてくださる、ということを信頼することである。

　それさえあれば、あなたが無い知恵を絞ってエゴで思い悩まなくても、良いものは自然と与えられる。

　逆に、あなたを愛し良くしてくださる神への信頼なくして、豊かにはならない。

　例えなったところで、その豊かな物質はあなたの心の豊かさとは何の関係もない。かえって、あなたは「無い者」のようになる。　

　平たく言えば、次のように言い換えられる。

●宇宙を信じなさい。あなたの身に起こる、すべてのことを受け入れなさい。

　できることなら、そこにさらに感謝を加えなさい。

　例えばあなたが「お金持ちになりたい」といくら自我で強く願ったところで、大して何もできないだろう？　できたとしても、それはあなたの実力というよりは、色々な外的要因が重なったことによる「お蔭様」である。あなたが出した自力など、爪の垢ほどしかないので、誇るのは滑稽である。

　そんなことに血道をあげるのは、宇宙が味方であり、最善を与えてくれていることを知らない者のすることだ。

　与えられた状況に関して、「なぜ」を問うのではなく——

「どのようにしたら？」を問いなさい。

　起こったことは起こるそばから受け入れ、それを踏まえてどうすれば最善か？　を選択していくならば、いつの間にかあなたは豊かになっているはずだ。

　あなたが気にしなくても、気が付けば添えて与えられているはずだ。

　スピリチュアルな教えの代表的なひとつに、『この世界であなたに起きることは、実はすべてはあなたが選んでいる。あなたの責任である』というのがある。

　別名、『100％自分原因説』という。

　もちろん、考える角度によっては、それは間違っちゃいない。

　でも、その通りだからといって、その考え方が人を救い、助けになるかというと、そうでもない。

　かえって、理不尽感とプレッシャーを与えることもある。

　あなたは、その地に生まれることを望んだ自覚はありますか？

　あなたは、男（または女）に生まれようと思って、生まれてきた自覚はありますか？　こういう親のもとに生まれよう、と選択した自覚はありますか？

　顔立ち、身体能力、障がいの有無、その他の身体的特徴を選んで生まれてきた自覚はありますか？

　まず、「ない」はずである。

　確かに、次元を超えたあちら側、つまり「あなたとして生まれ、あなたの目を通してあなたの人生を体験しようとしてあなた、を始めた大元なる魂」は、その自覚を持っているはずだ。

　でも、この世界に生まれ落ちた時点で、あなたは意図してこの世界に来る前の記憶は全部消されている。でないと、人生ゲームが面白くないから。

　カミサマというか、その大元もちょっと間が抜けているのか、まれにその「記憶や自覚」を持って生まれちゃう人もいる。前世紀億、なんていうものを持っている人などがそうだ。

　ただ、前世が分かる（あなたのも見てあげる）という商売スピリチュアル業者は本物偽物が混じり合っていて、見極めが容易でないので注意。ちなみに余談だが、キリスト教では前世（輪廻転生）というものを認めないので注意。あなたとして生まれたら、死後も永遠にあなただ。という世界観だから。（ちょっとイヤかも）

　脱線した話を元に戻すが、この世界で生きている私たちの意識と、人間として生きることを体験しようとした動機をもつ意識とは、別である。

　ある意味では同質とも言えるが、後者の情報のほとんどにアクセス制限がかけられている。ほとんどの人間は、逆立ちしても上位次元存在（分かりやすく言いすぎると、この世界をデザインした神様）の意識にアクセスできない。

　リュック・ベッソン監督の『ルーシー』という洋画作品では、主人公のルーシーがそこに到達し、宇宙のすべての仕掛けが分かってしまい、分かったのにこれ以上「人間を演じる」ことに難を感じたルーシーは、人としての形（存在形態）を放棄し、『私はいたるところにいる』という普遍的遍在的な上位次元の存在形態へと移行した。まぁ、最初はみなそうだったのだから、はじめに還るだけなんだけど。

　要するに、神は信仰の対象ではなく自分自身がそうだと知ってしまったので、人間ごっこをやめた、というのがこの映画のお話なのだ。

　だから、この世界で自分に起きる事はすべて自分の責任だと言うのは、ある意味では正しい。

　しかし、ほとんどの人間は地上に降りてくる前の意識について、どう頑張っても何も思い出せないから——

●あなたは、全部選んでいない。

　先天的に置かれた環境、条件に関してあなたに責任がない。

　一瞬一瞬起こる現象に関して、全部自分が生んでるという発想では、疲れ果てますよ。ああ、あれもこれも！　私がどこかで望んだから起きているというの？　私のせいだというの？

　これ、どうやったら調節できるのかしら？

　おお、またこんなことが起こった！（事故、失業、天災、愛する者の死）決してうれしくないけど、きっとこれも私が起こした……らしい。

　ああ、私の意識のどの部分の何がいけなかった？　どう意識操作をすれば、これらが起こらなくなる？

　それらは、あなたが自意識でする仕事の領域を超えたところでの働きの話だ。

　あなたが気に病むことではない。

　そんなことまでしょい込んだら、気が滅入りますよ。

　だから、今日のイエスの言葉において、「神の国と神の義とを求めなさい」というのは、このように理解しよう。

『起こる現象に関して、あなたがたが思い悩んでもどうにもならない。　

　それに関して、あなたがたができることは、あまりない。

　あまりないが、でもそれはとっても素敵な特権なのだ。

　起きることがある程度決められてないと、大変だ。呼吸の数から心臓を動かすリズム、何やかやまで全部あなたが主人となって決めないといけないとしたら、人生は楽しめないものとなるだろう。

　起こることをいちいち操作しよう、コントロールしようと躍起になるよりも。

　なぜこんなことが起こったのか？　自分が起こしたのなら、何がいけなかった？と考えるよりも——

　起こったことを受け入れた上で、それを踏まえて自分はどうしよう？

　どうしたら一番いいか？　そもそも私はどうしたいのか？

　そこだけ、意識し続ければいい』

　筆者も、実生活でそうしている。

　生きていれば、色んなことが起こる。

　もちろん、そんなこと望んじゃいないけど？ ってことは起きる。

　でも、それは考えても仕方がない。

　だって、未知数の可能性と不確定要素と変化に富む世界で、ゲームをしているのだから。そこではすべて（自覚可能な）意識通り、思い通りなんてことはない。

　ゲームだから、障害はある。逆に障害や問題がないゲームなどない。　

　ゆえに、我々が自意識を使って身の程をわきまえた最善のことをしたいなら、次のことをわきまえているとよい。

●起こること、起こったことをとやかく考えない。

●起こってしまったことを踏まえて、次に最善を選択していくしかすることがない。

　宇宙を信頼する、という意識状態で、起こることに毎瞬毎瞬向き合うしかない。

　その連続の果てに、気が付いたらすべてがうまく回っていた。これこそが、豊かさの体現の必勝パターンである。

　欲しい欲しい、引き寄せようという意図をもって何かをすることは、限界がある。引き寄せなければ豊かになれないんじゃない、私はすべてを所有している。そもそも豊かなのだ——。

　信頼してそういう認識にさえ立てれば、不思議なほどに現実が協力的に動いてくれる。（……こともある）

　あなたが自我意識で対策を立て、行動するほうが何十倍も時間と労力がかかる上、得れてもあなたの貧しい意識が、それを長く引き留めておけないだろう。

　皮肉な話であるが、本当の豊かさが分かった人物は——

　経済的に豊かな時だけでなく、そうでない状況でも意識は変わらない。

　あいも変わらず、豊かだとマジで思い続けている。やせ我慢じゃなく。

　だから、大変だ！　とか思わない。

　ああこんな貧しい状況になったのは、私の中に貧しい意識があったからだ！

　常人はそう思うかもしれないが、豊かさの体現者はそうではない。

　なぜなら、豊かさは現象に左右されないと分かっているからだ。

　貧しい現象が襲ってきたら負けなのではなく、意識という砦が守られていたら、勝ちなのだ。

　そこが死守されていてこそ、時間性とともに現象面でもまた豊かに変わってくるチャンスもあろう、というもの。

　まず「神の国と神の義をもとめよ」とは、分かったような分からないような言葉だが、ぶっちゃけた平たい表現をすると——

●ないものねだりをしたり、あれこれ心配し過ぎたりせず、まずあなたができる範囲の事を、足元を固めるような感じでしっかりおやりなさい。

　これだけ壮大に話を展開しておいて、この結論！（笑）

　是非あなたも、今回のイエスの言葉を心に留めて、現象をコントロールすることに一喜一憂するよりも、世界が与えてくるすべてのことを受け入れると腹を括ってください。

　起こることを変えようとするのではなく、起こることが起こった上で、じゃあそこからどうしようか。どう選択したら、どう解釈したら、自分の心が納得するのか。

　そして幸せを感じることができるのか。

　そこに、意識の光を当ててみてください。